スペシャルコラム
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一、 判決番号:最高行政法院判決110年(2021年)度上字第582号
二、争点:先行技術の数と、容易に完成できるか否かという進歩性についての判断は関連性があるか?
三、係争特許:I359796ガラス加熱の方法及び装置
四、上訴人の主張:
上訴人は原審において、「証拠2から証拠5などの組み合わせから、ガラス表面の伝熱方式は、炉外吸気/炉内吸気をそれぞれ上表面/下表面に対して行って熱を伝達する4パターンのみであることが分かり、その4パターンはいずれも当該技術分野に従事する者が用いる可能性のある方法であることから、係争特許は進歩性を有しないことが証明された」と主張している。
五、裁判所の見解:
ある発明が進歩性を有するか否かの判断は、当該技術分野における通常の知識を有する者が、出願前の先行技術に基づいて当該発明を容易に完成できるか否かによって決まり、先行技術において参考にできる技術の多さと関連性はない。先行技術においてそのような技術を試行錯誤することが教示されていれば、参考にできる技術の数が多くても、当該発明を容易に完成するのに支障はない。逆に、先行技術において試行の動機がなければ、試行回数が少なくても、当該発明が容易に完成され得るものだと結論付けることは困難である(最高行政法院判決110年(2021年)度上字第582号を参照)。
六、結論:
証拠は、当該発明がガラスの上表面に空気を対流させる(対流を増やす)伝熱方式(これにより上下表面が均等に熱を受けるようになる)を採用していることを明確に示し、これらの証拠はいずれも(下表面は受ける熱を増やす必要はない)下表面に対する圧縮空気の対流伝熱メカニズム(半対流空気圧方式に属する)を採用することには言及していないため、当該技術分野に精通する者がこれらの先行技術の内容に動機づけられて係争特許の発明の技術的特徴を容易に完成できるとは言い難い。したがって、先行技術において開示された技術手段の数は、容易に完成できるか否かという進歩性の判断とは無関係であり、先行技術文献に当該技術を試行する動機が実際に存在するか否かを判断する必要がある。