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中国企業の商標をめぐるマイケル・ジョーダン氏の訴訟 他人の商標登録、「喬丹」はNGでも「QIAODAN」はOK?
 

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中国企業の商標をめぐるマイケル・ジョーダン氏の訴訟 他人の商標登録、「喬丹」はNGでも「QIAODAN」はOK?

中国企業の商標をめぐるマイケル・ジョーダン氏の訴訟 他人の商標登録、「喬丹」はNGでも「QIAODAN」はOK?

2016年中国10大知財事件分析〈一〉

中国最高人民法院主催の知的財産権宣伝ウィークで2017年4月24日に発表された、知的財産権保護に関する10大事件および50の典型的事例より抜粋。

 

【事件概要】

世界的に有名なアメリカの元バスケットボール選手マイケル・ジョーダン氏は2012年、中国のスポーツ用品メーカー「喬丹体育」が登録していた「喬丹」、「QIAODAN」等(「喬丹」は「Jordan」の中国語表記、「QIAODAN」は「Jordan」の中国語発音のローマ字表記)の商標について、中国商標評審委員会(商標審判部に相当)に登録の無効を請求した。そして、同委員会および北京高級人民法院(高等裁判所)のいずれにおいてもジョーダン氏の主張は退けられた。さらに2015年、ジョーダン氏が最高人民法院(最高裁判所)に提出した再審請求について、同年12月に下された判断によれば、係争商標のうち10件についての審理が行われ、50件についての再審請求が却下され、8件については審査が中止されることとなった。

 

【判決結果】

(一)「喬丹」の商標3件については、無効にすべきであるとの判断により一審、ニ審判決を破棄。

(二) 「QIAODAN」の商標4件および「qiaodan」と

の図形が結合した商標3件については、二審判決を維持してジョーダン氏の再審請求を棄却。

 

【判決理由】

(一)    係争商標の登録は、ジョーダン氏が有する「喬丹」についての氏名権を侵害しており、2001年改定の中国《商標法》第31条1(「商標登録の出願は先に存在する他人の権利を侵害してはならない」)の規定に反するため、無効にすべきである。

しかし、「QIAODAN」、「qiaodan」については、ジョーダン氏は氏名権を有していないため、係争商標がジョーダン氏の氏名権を侵害することにはならない。

  

(二)    本件の裁判官は商標法の関連規定について、自然人が特定の名称について氏名権の保護を主張する際、その特定の名称は3つの条件(1:当該特定名称は中国において一定の知名度があり、関連公衆に知られている。2:関連公衆が使用する当該特定名称は当該自然人を指すものである。3:当該特定名称と当該自然人の間にはすでに安定した対応関係が確立されている。)を満たす必要があると指摘している。「喬丹」と元NBAスターであるジョーダン氏の間にはすでに安定した対応関係があるので、氏名権を有すると言えるが、「QIAODAN」、「qiaodan」については氏名権がないと判断された。

 

【分析】

現行の中国商標法第32条では、商標登録の出願は先に存在する他人の権利を侵害してはならないと規定されている。最高人民法院によれば、「先に存在する権利」とは、概括的規定に属し、民法通則第99条の氏名権もこれに含まれるが、中国の司法実務においては、先に存在する氏名権の保護の基準および条件がこれまで不明確であった。最高人民法院は今回の判決で先に存在する氏名権の保護問題の法律適用基準について詳述しており、この判決は今後類似事件の裁判の判断基準となる可能性がある。

 

ただし、氏名権を主張する特定の名称が最高人民法院の定める3つの条件を満たすか否かは、請求人が提出する証拠によって判断される。本件で最高人民法院が認めたのは、「喬丹」という中国語表記とジョーダン氏の名前の対応関係であり、これは大量に提出された中国において「喬丹」がジョーダン氏を指す名称であることを示す証拠に基づいた判断であり、一般的な中国語表記に基づいた判断ではない。言い換えれば、提出された証拠では「QIAODAN」とジョーダン氏の間にすでに安定した対応関係が確立されていることを十分に証明できなかったゆえに、他人がジョーダン氏の名前の発音ローマ字表記と同じ綴りの「QIAODAN」の商標を使い続けることが可能になったと考えられる。つまり、先に存在する氏名権の保護を主張するためには、その名称を大量に使用することにより、その名称と人物の間に対応関係を確立する必要がある。商標法により氏名権の保護を得ることは、実際容易ではなく、氏名権を有する名称について他人が商標の先取り登録をするという現象の阻止にも、それほど役立たない。

 

【出所】

​人民法院新聞伝媒総社​​​​、新華社、最高人民法院(2016)最高法行再15、20、25、26、27、28、29、30、31、32号行政判決書

 

【注1】

商標法は2013年に改定され、2001年《商標法》第31条は現行法第32条である。