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「何を今さら」と毒づいてしまいそうだ。韓国でよく知られた商標が、中国で「パクリ登録」される被害が相次いでいるという。「横城韓牛」「ミスターピザ」「キムパプ(のり巻き)天国」…。既に中国人が先行して商標登録を済ませしまい、中国でそのまま使用するには訴訟を起こすか、交渉で商標使用許可を得なければならない。かつて日本の人気アニメ「クレヨンしんちゃん」も中国で標的にされた。パクリ天国・中国に対抗し、日本の特許庁は取り消し訴訟を起こす中小企業への補助に乗り出す一方で、韓国は中国を刺激したくないのか、“自主防衛”を呼びかけるだけだ。
被害企業は600社以上に
昨年、中国で韓国のかき氷専門店「ソルビン(雪氷)」の商標と同じ中国版「ソルビン」が商標として出願された。韓国経済新聞(電子版)によれば、商標には韓国商標のかき氷の器の絵は抜けており英語表記になっているが、字体が全く同じで韓国商標と区分しにくいものになっているという。
韓国紙、朝鮮日報(電子版)は、中国で韓流が広がるのに伴い、韓国企業が商標を盗用されるケースが増えており、今年5月までに中国で先行登録された韓国の商標は1千件を超え、被害企業は600社以上に上る(韓国統計庁まとめ)と伝えている。商標の無断先行登録は、化粧品、食品、衣料、フランチャイズなど幅広い業種にわたる。
韓経新聞によれば、商標が盗用されれば現地の商標法により異議を申請したり無効審判を請求したりできるが、現地の法律の助言を受けながら一定金額を出して譲り受けるケースも多いようだ。韓国の特許庁によれば人気ベーカリー「パリバゲット」は5月に紛争で勝訴したが、ブランド牛の「横城韓牛」はまだ紛争中だという。
韓流ドラマが引き金に?
なぜ今、韓国の商標が中国で「パクリ登録」される被害が相次いでいるのだろうか。特許庁のナム・ヨンテク産業財産保護支援課長は朝鮮日報の取材に対し、「韓流ドラマが中国で人気を集め、ドラマとのタイアップ商品、ドラマに登場する商品のブランドを先行登録するケースが多い」と説明している。
そして代表的なケースとしてフライドチキンを挙げた。韓流ドラマを見た中国人の間では「チメク」、つまりチキンとメクチュ(ビール)を一緒に楽しむことが流行らしいが、韓国のフライドチキン店のブランドが先行登録されたため、韓国ブランドの中国進出が壁に直面。「クムネチキン」「キョチョンチキン」「テンキュマムチキン」…。主要なブランドは既に中国で「おパクリブランド」としてあふれているという。
こうした背景もあり、韓国の商標だけを狙った専門商標ハンターが勢いを増していると韓経新聞は伝えている。別名「ブローカー」と呼ばれる彼らはパクった商標を、現地に進出する韓国企業より先に出願。一度に数百件の商標を先に出願しておいて、譲渡を要請する国内企業に大金を要求するやり方でのさばっているようだ。
韓国は中国を刺激しない方がいいと思ってる?
韓国の特許庁は被害を防ぐため、韓国国内で事業を行う場合でも海外進出を念頭に置いた商品戦略が求められると企業に呼び掛けている。海外進出に備え、ハングルの商標だけでなく、英文や中国文など進出先の現地語による商標も確保しておくことが重要となる。
だがこれでは「自分の身は自分で守りなさい」と、政府が企業を突き放しているようにも思える。これに対し、日本の特許庁がもっと踏み込んだ取り組みを今年度からスタートさせている。中国企業などが日本の人気キャラクターや、地域の特産品などの名称を無断で商標登録する「悪意の商標出願」に対し、取り消し訴訟を起こす中小企業への補助を行うのである。海外での知財裁判は費用がかさみ、日本企業が泣き寝入りになるケースもある。商標の“不法占拠”への対抗を政府が後押しし、国内のブランド価値を守る狙いがある。弁護士への相談や訴訟準備など関連費用の3分の2について、500万円を上限に補助する。
日本の場合、中国の“パクリ”への警戒感は強い。かつて人気アニメ「クレヨンしんちゃん」が標的にされ、最近では熊本県のPRキャラクター「くまモン」にそっくりな「好運熊(ラッキークマ)」というキャラクターが中国のテレビ局に登場している。それゆえ企業を守ろうという意識が強く働くのかもしれない。
一方、韓国の特許庁は訴訟保険などで被害企業を支援しているものの、事件数が多いうえ、費用がかかるとして、企業に対して事前の防止努力を強く求めている。韓国の場合、中国を刺激しない方がいいとの意識が働くのかもしれない。
出典:http://www.sankei.com/west/news/160704/wst1607040004-n4.html