麻辣火鍋の有名店「鼎旺小吃店」の経営者である姉妹は、姉がコンサルタント料を定期的に受け取る代わりに、姉と姉の子は「鼎旺小吃店」の運営について法律上の権利を主張しないことを取り決めた協議書を交わした。しかし、姉の息子は、「鼎旺」「老鼎旺」の商標を無断で登録出願し、さらに、妹の娘が商標権を侵害したとして訴訟を提起した。差し戻し審の裁判所は、妹と娘が設立した「鼎旺」の商標に関連する会社は、協議書に定められた「鼎旺小吃店」と同一事業体であり、姉の息子が起こした訴訟は明らかに協議書の内容に違反しており、受け取ったコンサルタント料は返還されるべきであると判断した。
なお、コンサルタント料やライセンス料などは、フランチャイズ方式を採用して店舗ごとに徴収し、権利を保護することが推奨される。
【事件の内容】
1992年以来、姉である甲と妹である乙は鼎旺小吃店(店名:鼎旺麻辣鍋)を共同で経営し、その後、運営の都合により原商号を変更し、乙(妹)が代表者となり鼎旺麻辣有限公司(店1)を設立した。そして、スペース不足による業容拡大に伴い、鼎旺火鍋有限公司(店2)を新設し、乙の娘である丁が代表者となり、両店とも同じ「鼎旺麻辣鍋」の店名を使用していた。
しかし、乙は、甲(姉)の息子である丙が部外者に技術を渡したことを発見し、甲と丙に対し鼎旺小吃店を去るように要求した。2015年4月29日、甲乙双方は協議書にて、2015年3月から2020年2月まで、乙は甲に月額17万台湾ドルのコンサルタント料を支払うこと、甲と甲の子は鼎旺小吃店の経営について争ったり民事上または刑事上の権利を主張したりすることはできないこと、もし違反した場合、甲はコンサルタント料を返還しなければならないことを取り決めた。
ところが、甲の息子である丙は、協議書締結前の2015年3月23日に「鼎旺」と「老鼎旺」の商標を無断で登録出願し、同年6月6日に老鼎旺火鍋店 (現在、「老曹旺川味鍋物」に改名)を設立し、その後、丁を相手取って商標権侵害の訴訟を提起した。乙はこれに対し、甲が協議書の合意事項に違反したことを理由とし、合計995 万3736台湾ドルのコンサルタント料の返還を求めて訴訟を起こした。
【各裁判所の判決】
一審では、店2の設立は鼎旺小吃店の事業調整であり、店2は同じ事業組織に属するが、丙が丁を相手取って商標権侵害訴訟を提起したことは、双方の合意事項に違反していると判断された。甲は、それを不服として上訴した。
二審では、店2は協議書に定められた同一事業体の範囲に含まれないため、丙が丁を「鼎旺」の商標権侵害で刑事告訴したことは協議書の条項に違反しておらず、コンサルタント料を返還する必要はないと判断された。
三審では、店2は収容客数の増大と節税計画のために設立されたものであり、協議書における同一事業体に属すると判断されたが、二審は、丁が丙を提訴した行為が協議書の合意事項に違反するか否かを究明すべきであるとして、原判決は破棄された。
差し戻し審では、最終的に、店2は店1を基に調整された事業組織であり、協議書における同一事業体に属し、「鼎旺」の商標権は、協議書における『鼎旺小吃店』の法的権利に属するため、丙が「鼎旺」の商標を無断登録し、かつ商標権侵害で丁を提訴したことは違反行為であると判断され、甲はコンサルタント料995 万3736台湾ドルの返還を命じられた。