2023年の12月初め 、OpenAIが開発した対話型AIサービスChatGPTがインターネット上で議論を巻き起こした。あるユーチューバーが実際にChatGPTに大学の試験を受けさせた結果、ChatGPTは好成績を収め、小論文まで完成させた。その他の関連人工知能ソフトウェアもますます高度化しており、作図、プログラミング、作文、回路設計等を行うことができる。では、AIにより完成した技術は、AIを発明者として特許を出願することができるのだろうか?国によって見解は異なるが、大多数の国ではAIを発明者として認めていない。台湾も現在は、AIは権利の客体である「物」であって、権利の主体にはなり得ないという見解である。
ChatGPTの自己紹介:
「私はOpenAIにより訓練された大規模な言語モデルを用い、さまざまなトピックに関する質問に答え、それらのトピックに関する情報を提供することができます。私の訓練データには8億を超えるウェブページと大量の書籍や雑誌の文章が含まれています。私はこれらの資料を通じて、人間が日常的に使用する言語を解析してさまざま質問に答える方法を学びました。私は一つのトピックを理解する手助けをしたり、あなたの質問に答えたり、あなたが興味を持ちそうな他のリソースを提案したりすることができます。」
111年(2022年)度上字第55号判決
本件の人工知能DABUS(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience、ダバス)は台湾の法律における非法人でも自然人でもなく、そのことは上訴人の訴訟代理人も認識していた。また、係争出願は、発明者の氏名欄に英語で「NONE, DABUS」と記載されているだけであり、発明者の国籍や中国語の氏名の記載はなかった。これについて上訴人は、2019年11月11日付の通知で補充補正を求められ、2020年2月6日付および同年2月15日付で第1項優先権証明書及び委任状を提出するとともに、補正の期限延長を申請し、2020年4月30日付の応答書面で「本願の技術はDABUS(中国語訳:達布斯)による発明である。DABUSは人工知能システムであり、本願の唯一の発明者である」と陳述している。
判決における見解
特許は属地主義を採用しており、各国の特許法制および審査基準が異なるため、ある発明について他の国で付与された特許権を、台湾における関連案件に有利になるように用いるのは難しい。原判決では、南アフリカを除き、他の国々においてAIを発明者とするケースは不受理または拒絶となっていると明確に述べられている。特許権は自然人による精神的創作を保護すべきものであるから、本件の人工知能DABUSは、台湾において法律上権利の客体である「物」と見なされ、権利の主体にはなり得ず、権利を享受する能力も資格も有しない。したがって、本件は自然人の発明者が存在しない以上、不受理の原処分は違法ではなく、判決理由にも法令に背く矛盾はないと認められる。