商標属地主義の保護原則を無視した結果、訴訟も敗訴で泣き寝入り！
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商標属地主義の保護原則を無視した結果、訴訟も敗訴で泣き寝入り！
事件の概要
智慧財産および商業法院112年度（2023年度）民商訴字第4号民事判決
一口口生技有限公司(以下「A社」という)は、2012年から香港の販売業者「大口栄進口有限公司」（以下「B社」という）を通じ、「黑金傳奇」の商標を付した黒糖ブロックやしょうが茶ブロックを香港で販売していたが、両社は2019年に販売契約を解消した。しかし、B社が「黑金傳奇」の商標を付した黒糖ブロックやしょうが茶ブロックなどの販売を続けていることをA社は発見した。
A社の調査により、B社が販売していた商品は「黒金傳奇黒糖食品有限公司」（以下「C社」という）が生産製造しているものであることが判明し、A社は、C社がA社の著名商標を使用し、その商標はC社の中国語名称の一部に用いられていたため、商品の出所に対する消費者の混同誤認を招いていると考え、C社を提訴した。
判決要因
A社が提出した証拠では香港のB社が販売する商品がC社によって製造されたものであることを証明できなかった
1.A社は、香港のB社のウェブサイトで販売される商品には、C社について「授権監製：黒金傳奇黒糖食品有限公司」と表示されていたことを突き止めたが、C社は生産製造の事実も授権の事実も否定しており、A社は、当該商品がC社製造の商品であることを証明する資料を判決前に提供しなかった。
2.香港の商品に表示されたC社の名称とC社の登記住所は異なっており、商品がC社による生産または授権であるかどうかは疑わしいものであった。工場の住所と設立住所は必ずしも同じではないが、A社は台湾において「黑金傳奇」の商標が付されたC社製の商品を購入してはいなかった。
3.商標属地主義の保護原則に基づき、台湾における商標権の効力は台湾に限られ、香港には及ばない。
A社が提出した証拠では「黑金傳奇」が著名商標であることを証明できなかった
1.C社は2017年10月11日に設立登記され、A社が資料を提出したのはC社の設立登記時期より早かったが、資料は非常に乏しく、「黑金傳奇」の商標が付された資料の中には日付が表示されていないものもあった。
2.報道資料：「黑金傳奇」商標が付されている一部の資料には日付が表示されていなかった。
3. 台湾のFacebookページ：投稿の日付は2012年4年7日で、C社の設立登記よりも早いが、「いいね」の数やフォロワー数は限定的であった。
4.食品展示会：展示会に参加したのは2018であり、C社の設立登記時期より後である。中国で展示会に参加したのは2013年であるが、台湾で商標が使用されたことを示す資料にはならない。
5.受賞情報：2018年に中華消費者安保協会の賞を受賞したが、「黑金傳奇」商標の表示はなく、A社の名称のみであり、時期もC社が設立登記された時期より後である。
6.したがって、上述の資料から、A社の「黑金傳奇」商標がC社設立以前から著名な商標であったと断定することは困難である。
訴訟結果：A社の訴えを棄却
A社の台湾における商標登録情報
登録/査定番号：01998919
商標種類:商標
商標名称:黑金傳奇O-KING LEGEND及び図
出願番号:107081506
正登録/査定番号01998919
出願日:2018/12/18
権利存続期間:2019/07/16～2029/07/15
商標権者:一口口生技有限公司
国籍:中華民国
図形中文: 黑金傳奇
図形英文: O KING LEGEND
商標区分:030
商標/役務名称:茶；茶葉；チョコレート；コーヒー；アイスクリーム；氷菓子；調味料；香辛料；黒糖ブロック；蜂蜜；デザート；キャンディー；米菓子；チップス；穀物菓子；ペストリー；プリン；即席米飯；即席麺；餃子。
登録/査定番号:02044801
商標種類:商標
商標名称:黑金傳奇及び図
出願番号:108023122
正登録/査定番号02044801
出願日:2019/04/16
権利存続期間:2020/03/01～2030/02/28
商標権者:一口口生技有限公司
国籍:中華民国
図形中文: 黑金傳奇
商標区分:030
商品/役務名称:黑糖；砂糖；ブラウンシュガー；白糖；角砂糖；氷砂糖；麦芽糖；代用甘味料；天然甘味料；黒糖しょうが茶；黒糖ブロック；アイスクリーム；冷凍即席米飯；冷凍即席麺；デザート；餃子。
A社製品
会社名称：一口口生技有限公司
商標態様/使用態様：（略）
製造地：台湾→商標登録済み
販売地:香港→出願が拒絶された
香港での押収品
会社名称：授権監製:黒金傳奇黒糖食品有限公司
商標態様/使用態様：（略）
香港での商標出願の出遅れ
A社は商標が冒認出願されたことを発見した後、別の商標を出願したが、その出願は別の会社であるMANY WINE (HONG KONG) LIMITED（以下「M社」という）の出願よりも後であったために拒絶された。
出願人： 張美華(A社の当時の代表者)
商標出願日：2017-03-07
出願区分：5、29、30、35、38、42、43
商標態様：（略）
出願人： M社
商標出願日：2013-09-05
出願区分：30、32、35
商標態様：（略）
他人の商標より出願が遅かったため、商標出願が拒絶された
基本情報
〔210/111〕商標番号:304068171 〔540〕商標
狀況: 出願が拒絶された
商標文字 O KING LEGEND 黑金傳奇
商標の3年不使用取消審判請求
M社の商標「黑金傳奇」のその後の状態を調べたところ、M社は2019年4月16日付けで、商標をCHANG RONG HOLDINGS LIMITED（中国語：栄昌集団(香港)有限公司）に譲渡していた。さらに、2021年8月10日、商標が「3年間使用されていない」という理由で指定商品の一部が取り消されたが、「黒糖しょうが茶；砂糖」の指定商品は引き続き有効であり、2033年9月4日まで商標の延長が認められている。
おわりに
結論として、仮にA社が製品をA国で販売する前に、現地で商標登録出願を行っていれば、後の商標出願が拒絶されたり、他人の商標取消審判請求で困難が生じたりして、余計な費用と時間を費やすこともなかったと考えられます。
したがって、商標属地主義の保護原則を考慮することを念頭におき、商標戦略の事前計画の重要性を再認識していただいたうえで、商標についてご質問、ご相談などございましたら、ぜひ弊所までお問い合わせください。
参考：経済部智慧財産局
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[1]第52(2)(a)条：「商標が特定の商品または役務を指定して登録されているが、香港において少なくとも継続して3年間当該商品または役務について真正に使用されておらず、また、当該商標の所有者の同意を得たうえで当該商品または役務について真正に使用されておらず、不使用の妥当な理由（例えば、当該商標により保護される商品または役務の輸入制限またはその他政府の規定）がない場合、商標の登録を取り消すことができる」