スペシャルコラム
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「熊讃」は、台北市のマスコットとして年間を通じて大小さまざまな公益活動に参加し、都市のマーケティングに重要な役割を果たしており、市民にも広く知られているが、商標権がないために、市場には「熊讃」の海賊版が氾濫し、インターネットや夜市では多くの「中国版熊讃」が流通している。
台北市政府の統計によると、2018年から現在までに、4200万新台湾ドルを超えるマーケティング・プロモーション予算が投入されている。しかし、海賊版が横行しているため、マーケティングキャンペーンを行うたびに商標使用権を持たない業者の商品の販売促進をしていることになる。さらに、合法的に権利者の権益を保護できないため、模倣品が市場に溢れ、合法的な使用権を有する製造業者の商品の完売率と実際の販売額は年々減少傾向を示しており、2018年はライセンス料が167万新台湾ドル、完売率が100%であったのに対し、2022年はライセンス料が81万新台湾ドル、完売率が52%、実際の販売額は42万新台湾ドルとなっており、合法的な使用権を有する業者の権益が損なわれている。
実際、台北市政府は2016年9月に「熊讃」の商標出願を行った。しかし、智慧財産局(台湾特許庁)は、「熊讃」は「最高、最良」を意味する台湾語の発音と同じ読み方の語句であり、消費者に普遍的に認知され使用されている口語や流行語であると見なし、「熊讃」には商標の識別性がないと判断した。
台北市政府は出願中に意見書を提出し、「熊讃」商標は2017年台北ユニバーシアード競技大会のマスコットの名称であり、台北市政府観光伝播局が主催した命名イベントで選ばれ、そのマーケティングには多額の資源が投入され、商標は実際に使用され、外部への露出も多く、消費者は「熊讃」商標を2017年台北ユニバーシアードで登場した黒い熊のマスコットとして認識しており、商標識別性を獲得できるはずだと主張した。
しかし、台北市政府が提出した証拠は、「熊讃」商標が長期間かつ大量に使用され、後天的識別性を獲得したことを証明するには不十分であると当局に判断され、出願は拒絶された。
商標名称:熊讃
出願番号:105055986
出願日:2016/09/20
拒絶査定公告日:2017/04/01
拒絶番号:T0378597
区分:018
出願人:臺北市政府產業發展局
その後、2019年に再度出願が行われ、最終的に「熊讃」の文字部分に対して専用権放棄の声明の形式をとることで商標登録された。
商標名称:熊讃
出願番号:107041194
出願日:2018/06/28
登録日:2019/03/01
登録番号:01973669
区分:014
出願人:臺北市政府觀光傳播局
備考:「熊讃」の文字部分に対して専用権放棄する。
台北市政府観光伝播局は、「熊讃」商標が2016年から現在まで長年にわたって使用されており、熊讃は台北市のマスコットキャラクターやイメージキャラクターとして国内外で知られており、長期間の使用により商標識別性を取得したことを証明できるはずであると考え、このほど再度商標出願を試みている。
商標名称:熊讃
出願番号:1120814454
出願日:2023/11/23
登録日:2019/03/01
登録番号:01973669
区分:028、041
出願人:臺北市政府觀光傳播局
備考:「熊讃」の文字部分に対して専用権放棄する。
総括
商標法では、商標が識別性を有しない場合は登録できないと規定されている。
識別性を有しないとは?
識別性を有するということは、商標が商品・役務の出所を示すことを目的として使用され、他人の商品・役務との区別を可能にすることを意味する。したがって、消費者が商標によって商品の出所を識別できない場合、商標は識別性を有していないことになる。例えば、商標文字が商品の品質、用途、原材料、原産地を説明する文字や図形である場合、消費者はそれをそのまま商品・役務の説明と見なし、商品の出所を識別するための商標として認識することはない。例えば、飲料商品に「栄養補給」という文字が使用されている場合、消費者はこの文字を商品の説明と認識し、この文字が使用されている商品が特定の会社またはメーカーのものであるとは認識しない。したがって、「栄養補給」の文字は商標識別性を有していないため、商標権を付与することはできない。
しかし、時には識別性のない文字が長期間使用された後、関連する消費者がすでにその商標を特定の出所を示して識別する標識と見なしていることがある。その場合、その商標は後の使用により、消費者が出所を識別できる効果を得たため、商標登録が許可される可能性がある。
識別性のない商標が、長期間の使用によって後天的識別性を獲得することは珍しくない。例えば、「多喝水多運動」(日本語訳:もっと水を飲み、もっと運動しよう)、「鑽石恒久遠一顆永留傳」(日本語訳:ダイアモンドは永遠の輝き)、「台湾Pay」などである。
台湾における「熊讃」商標の使用期間と使用頻度から、「消費者に普遍的に認知され、使用されている口語や流行語」という概念を排除するのに十分な使用証拠を提出することは可能なはずである。台北市のマスコット「熊讃」が一日も早く商標権を得ることが期待される。