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東南アジア諸国(ASEAN)間の特許協力は近年ますます強化されており、企業がこの地域内で特許を取得する際の利便性が向上している。たとえば、あるASEAN加盟国で特許出願を行い、実体審査を通過すると、他の加盟国での審査を迅速に進めることが可能である。これにより、時間とコストを削減し、審査の効率が高まる。
東南アジア諸国(ASEAN)間の特許協力は近年ますます強化されており、企業がこの地域内で特許を取得する際の利便性が向上している。特許協力の具体例として、ASEAN特許審査協力(ASEAN Patent Examination Co-operation、略称ASPEC)プログラムが挙げられる。出願人があるASEAN加盟国で特許出願を行い、実体審査を通過すると、他の加盟国での審査を迅速に進めることが可能である。これにより、時間とコストを削減し、審査の効率が高まる。ASPECは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの9か国で構成されており、これらの国々の特許審査手続きを相互に迅速化することを目的としている。
PCTとASPECの比較:どちらを選ぶべきか
PCT(特許協力条約)は、出願人が一度の出願で最大153か国の加盟国において優先権を確保することができる制度である。しかし、PCT出願は直接的に特許を付与するものではなく、各国で国内段階の出願および審査を行う必要がある。
一方、ASPEC経由では、東南アジア諸国間での特許出願手続きを効率的に進めることができ、特に東南アジアを主要市場とする企業にとっては魅力的な選択肢となる。
東南アジア諸国における特許出願の特徴
1. インドネシア:審査待ち期間が長い
インドネシアでは、特許審査官の不足と審査案件の積み残しが原因で、特許審査の待ち時間が長くなることが一般的である。インドネシアでの特許出願を検討する際は、十分な時間を確保し、審査待ちの間に特許ポートフォリオを効果的に管理する戦略が求められる。
2. シンガポール:効率的な特許審査
シンガポールは効率的な特許審査プロセスで知られている。同国では「SG Patent Fast Track Programme」という特許審査迅速化プログラムを提供しており、最短6か月で特許を取得することが可能である。また、米国、欧州、日本または他のASEAN加盟国などで既に特許が取得されている場合、これらの結果を基にシンガポール特許庁が審査を加速させることができる。シンガポールは、迅速に特許保護を取得したい企業にとって、非常に有利な選択肢の一つである。
3. マレーシア:英語およびマレー語による特許出願の要件
マレーシアでは、英語およびマレー語での特許出願が求められている。他の言語での出願は認められておらず、出願と同時に英語またはマレー語の翻訳を提出する必要がある。
4. カンボジア:中国および欧州との特許協定
カンボジアは、中国および欧州と特許登録に関する特別な協定を結んでいる。具体的には、中国で既に特許が付与されている場合、カンボジアでの実体審査を経ずに特許登録が可能である。これにより、中国で特許を取得している企業は、簡便にカンボジア市場へ参入することができる。ただし、この手続きは2018年3月28日以降に中国で付与された特許にのみ適用される。また、欧州特許出願人も、EPO(欧州特許庁)で認められた特許をカンボジアで効力を有するようにすることができる。これにより、カンボジアにおいて欧州特許と同等の法的保護を受けることができる。
5. ラオス:シンガポールとの特許協定
シンガポールで既に特許が付与されている場合、その特許をラオスで直接効力を有するように請求することが可能である。この手続きには追加の審査は不要だが、出願日は2002年1月17日以降である必要がある。
6. ミャンマー(ASPEC非加盟):発展途上の特許法制度
ミャンマーでは、2019年3月11日に初の特許法が成立し、その後数年にわたり特許法規が整備されてきたが、実際の施行は依然として発展途上にある。ミャンマー市場への参入を検討する企業は、最新の法規制の変化と出願要件を把握することが重要である。