越境ECでの商標権侵害訴訟で原告敗訴:消費者認識と商標権失効が判断の鍵に
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越境ECでの商標権侵害訴訟で原告敗訴:消費者認識と商標権失効が判断の鍵に

台湾知的財産及び商業裁判所は、商標「CLAIRE」の権利者が、「CLAIR」商標の使用による商標権侵害を主張した事案において、原告の訴えを棄却する民事判決を下した。本件の争点は、消費者がインターネットプラットフォームを通じて海外の外国企業から商品を購入する際に、商標の混同誤認が生じるか否かの認定にある。

越境ECでの商標権侵害訴訟で原告敗訴:消費者認識と商標権失効が判断の鍵に
台湾知的財産及び商業法院112年(2023年)度民商訴字第46号 民事判決
 
台湾知的財産及び商業裁判所は、商標「CLAIRE」の権利者が、「CLAIR」商標の使用による商標権侵害を主張した事案において、原告の訴えを棄却する民事判決を下した。本件の争点は、費者がインターネットプラットフォームを通じて海外の外国企業から商品を購入する際に、商標の混同誤認が生じるか否かの認定にある。
 
 
事案の概要
 
原告は、登録第01076607号の商標「CLAIRE」を保有しており、指定商品は第11類(電気ポット、電気コーヒーメーカー、トースター、乾燥機、浄水器、紫外線殺菌飲用機、冷温水ディスペンサーなど)である 。原告は、被告が2020年末以降、自身の商標に類似する「Clair」商標を空気清浄機等の商品(以下、本件商品)に無断で使用し、ネットショッピングサイト蝦皮購物(Shopee、以下「蝦皮購物」をいう。)で販売し、かつ被告は自社商品を台湾に輸入している旨をウェブサイト上で表示していると主張した。
 
これに対し被告は、原告の商標「CLAIRE」が、冷暖房機器や空気清浄機などの一部指定商品について、台湾の知的財産局により不使用として取消処分を受けており、原告が当該商品について商標権を保有していないと反論した 。
 
 
被告は、自身が2020年1月21日に「CLAIR」で商標登録を出願し、登録第02304122号として登録が認められ、指定商品には空気清浄機などが含まれると主張し、自身の「CLAIR」商標の本件商品への使用および蝦皮購物での販売行為は、商標権者としての権利行使であり、商標権侵害には当たらないと述べた 。原告は、被告が2020年末から係争商品に「CLAIR」商標を使用しているのは、無許可で近似商標を使用する行為であり、原告の商標権を侵害しており、その侵害状態が継続していると主張した。しかし、被告はこれに対し、原告が2020年末から被告が台湾市場で「CLAIR」商標を係争商品に使用していたことを裏付けるいかなる証拠も提出していないと反論した 。
 
被告は、台湾市場への参入のため、2020年初頭に代理人を通じて知的財産局に商標登録を出願したことは認めた。しかし、この出願は同時に原告の商標権の取消審判も併せて申請するものであったため、2020年末の時点では被告はまだ台湾市場に参入していなかったと主張した 。
 
被告は、原告が被告の台湾市場参入時期を2020年末と恣意的に主張していること、さらには係争商標が空気清浄機等の部分商品において商標権を有していないことを知りながら、被告に依然として侵害行為があると虚偽の主張をしていることは、意図的に裁判所を誤導しようとしているかのように見えるとも主張した。
 
 
判決の要旨
 
1. 商標及び商品の類似性
裁判所は、原告の商標「CLAIRE」が6文字のアルファベットから構成されているのに対し、被告がインターネット上で使用する「Clair」商標は1文字のみが異なるため、両者の商標は高度に近似していると認定した 。また、被告が蝦皮購物で「Clair」商標を使用して販売している商品が第11類の空気清浄機であり、これは原告の商標が指定する空気清浄機商品と同一であるとした 。
 
2. 原告商標権の効力喪失 
原告は、被告が2020年末から本件商標に類似する「Clair」を空気清浄機等の商品に使用し、商標法第68条第3号に違反していると主張した 。しかし、裁判所の調査によれば、原告の商標は、被告が2020年1月21日に取消審判を請求した結果、台湾知的財産局により、原告が取消審判請求日前3年以内に指定商品(冷暖房機器、空気清浄機など)について商標の使用証拠を提出できず、また不使用の正当な理由も主張できなかったため、商標法第63条第1項第2号に基づき登録が取消されていた 。この取消処分は、2021年9月27日の知的財産局の処分書によって効力を生じ、原告の不服申し立て(訴願及び行政訴訟)も棄却され、確定している 。したがって、裁判所は、原告は2021年9月27日以降、空気清浄機等の指定商品に関して本件商標の商標権を主張できないと判断した 。
 
3. 被告の商標使用の適法性 
原告は、被告が蝦皮購物等で「CLAIR」商標を使用して本件商品を販売したスクリーンショットを提出し、2020年末から高度に近似する商標を使用して本件商品を販売した事実を証明しようとした 。しかし、被告は2020年1月21日に「CLAIR」を知的財産局に商標登録出願し、2023年7月1日に登録第02304122号として公告されている 。また、被告は2013年から「CLAIR」を空気清浄機等の商品に使用しており、韓国で9件の商標登録簿を取得していることを証明した 。原告はこの登録簿の起終期間について争わなかったため、被告が2021年9月27日以降も継続して「CLAIR」商標を使用していたとしても、商標法第68条第3号に定める本件商標の侵害行為には当たらないと判断された 。
 
4. 混同誤認の有無 
原告は、被告が2020年末から2021年9月26日までの期間において本件商標を侵害したと主張した 。原告は蝦皮購物に掲載された被告の「CLAIR」空気清浄機関連商品の販売画面を提出したが、明確な開始終了時刻はないとされた 。裁判所が蝦皮購物の運営会社に照会したところ、被告は越境販売業者であり、配送方法は「蝦皮韓国」「宅配」であることが確認された 。また、被告は2021年9月27日以前に台湾の関務署への輸入申告記録がなく、原告も台湾の実店舗で被告製造の本件商品を購入した証拠を提出しなかった 。この期間中、消費者はインターネットを通じて韓国に所在する被告から直接本件商品を購入していたと認定された 。これにより、消費者は購入時に韓国のメーカーから購入していることを認識しており、台湾の原告から購入していると誤認することはなく、本件商品の出所または製造主体が原告の商標の商品と混同されることはないと判断された 。したがって、商標法第68条第3号の商標侵害規定の要件を満たさないと結論付けられた 。
 
 
判決の意義
本判決は、商標権侵害の判断において、特にインターネットを通じた越境取引における混同誤認の認定について重要な示唆を与えている。商標の類似性や商品の同一性だけでなく、消費者の購入時の認識や商品の実際の流通経路が混同誤認の判断に大きく影響することが示された。また、商標権の取消処分が確定した場合、権利者は当該商品について商標権を主張できなくなるという点も再確認された。
 
 
関連条文: 商標法第5条、第68条、第69条
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