一、判決番号:智慧財産及商業法院111年(2022年)度行専訴字第59号
二、係争実用新案:M549618電動マッサージベッド
三、争点:面ファスナーと長さ調節可能なストラップは「容易に完成できる」と判断されるか?
四、係争実用新案請求項1の技術的特徴:
本実用新案は以下の構成を含む電動マッサージベッドに関する。
ベッドフレーム22:フレーム本体を備え、そのフレーム本体の上面および底面を貫通する中空部を有する。
カバー部材30:一部がベッドフレームの中空部に収容され、衝撃吸収素材で形成され、上面および上面から凹設された収容溝を有する。
振動モーター40:カバー部材の収容溝に収容される。
支持部材50:フレーム本体の底面283に設けられ、カバー部材30の底面に固着してカバー部材30を支持し、相互に結着するオス面ファスナー52とメス面ファスナー54により構成され、オス面ファスナー52とメス面ファスナー54の一端はフレーム本体の底面に固定され、 オス面ファスナーとメス面ファスナーの他端は相互に結着してカバー部材の底面を支持および固定する。
五、証拠2(CN201280075494.9):
本発明は、マットレスファンデーションに関し、特に、マットレスファンデーション用の振動デバイスと方法に関する。本発明はモーター114、外殻122、ライナー126および可撓性ストラップ146を含む。可撓性ストラップ146は、長さを調節でき、第1領域158、第2領域162よび第1領域158と第2領域162とを相互に接続するバックル166を備える。
六、訴人の主張:
証拠2には係争実用新案の「相互に結着するオス面ファスナーとメス面ファスナーにより構成され」という技術的特徴が開示されていない。証拠2には、追加要素としてバックル166が含まれており、振動モーター114をしっかり固定できるものの、構造が複雑で組み立て工程が煩雑になるため、製造コストが上昇する。これに対し、係争実用新案は、オス面ファスナー52とメス面ファスナー54とを相互に結着し、カバー部材30の底面36を固定するだけで振動モーター40の固定が完了するため、部品コストが安いだけでなく、組み立て工程が簡単かつ迅速になり、製造コストを効果的に低減することができ、これらはすべて係争実用新案の有利な効果である。
七、法院(裁判所)の見解:
証拠2の明細書[0054]段落の記載内容によれば、可撓性ストラップは長さの調節が可能であり、長さを変えることで自然に締め付け・緩める機能を実現できることが分かる。つまり、迅速な組み立てが可能であり、組み立てコストを削減でき、振動モーターの位置を簡単に調整できるという効果を有する。さらに、証拠2ではバックルを用いて可撓性ストラップの締め付けを調整し、振動モーター部材をパネルに吊り下げる構造となっており、振動モーターをしっかり固定できる効果を有している。係争実用新案の請求項1では、「支持部材は、相互に結着するオス面ファスナーとメス面ファスナーにより構成され」と限定されているが、バックルを用いる方法であれ、オス・メス面ファスナーを用いる方法であれ、いずれも振動モーターを固定することを目的としており、その効果は予測不可能なものではない。
八、結論:
引用される先行技術の構成要素の名称や構造は、必ずしも係争特許・実用新案で使用されるものと完全に一致するわけではなく、先行技術の方が係争特許・実用新案よりも複雑である場合もある。特許・実用新案権者は通常、「先行技術の構造が複雑で、組み立て工程が煩雑であり、結果として製造コストが高くなる」と主張するか、または両者の構造の違いを主張する(例えば、本件ではオス・メスの面ファスナーが使用され、先行技術では調節用のストラップが使用されている)。しかし、裁判官が同一の構成要素か否かを判断する際には、文言による説明だけを考慮するわけではなく、その構成要素の「目的」「手段」「効果」などを総合的に考慮し、実質的に同じか否かを判断する。なお、先行技術のコストが高いか、係争特許・実用新案のコストが低いかといった点は、裁判において考慮されることはほとんどない。