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本件は、台湾智慧財産及び商業裁判所が「ISOFA」と「VSOFA」商標の類否および侵害の成否を判断した事案である。裁判所は、共通する「SOFA」の語はマッサージチェア業界で通用語化しており識別力を欠くと認定し、両商標の主な識別要素は先頭の「I」と「V」にあるとした。これにより、外観・観念・称呼のいずれにも明確な差異があると判断し、類似性を否定した。また、商品が高額で消費者の注意力が高いこと、他ブランド名との併記、広告起用者の違い等を踏まえ、混同のおそれも否定された。本判決は、非識別的要素を含む商標の類否判断における実務指針として重要である。

智慧財産および商業裁判所113(2024)年度民商上更一字第1號民事判決
1. 判決の概要
本件は、上訴人が保有する「ISOFA」商標と、被上訴人が使用する「VSOFA」商標との類否、および商標権侵害の成否が争点となったものである。台湾智慧財産及び商業裁判所は、いずれの商標もマッサージチェアに使用されているものの、両商標は類似しないと認定し、上訴を棄却した。
本判決の中心的争点は、
「二つの商標に共通する部分が識別力を欠く文字である場合における、商標の類似性判断及び混同のおそれの有無の認定」である。
2. 商標類似性の判断基準:共通部分が識別性を欠くか否かが核心
裁判所は、まず「SOFA」という語が「ソファ」を意味する一般的な英語であり、マッサージチェア業界では通用語化しており識別性を欠くと認定した。
よって、「ISOFA」と「VSOFA」の双方に共通する「SOFA」部分は、出所識別機能を有しないと判断された。
商標の主たる識別要素は先頭の「I」および「V」にあるとし、それぞれの文字に対する消費者の認識は以下のとおりである:
•「ISOFA」は「I(私)」と「愛(音)」を掛け合わせた造語的性質を有し、「愛沙發(私のソファ)」等の観念を喚起する。
•「VSOFA」は「Victory」「Very」などの意味合いを想起させる「V」により、異なる観念が生じる。
したがって、外観・観念・称呼においていずれも明確な差異が存在するとし、類似性は否定された。
3. 混同のおそれの判断:消費者の注意力および実使用の態様から否定
裁判所は、混同のおそれの有無について、以下の要素を総合的に検討した:
•両商標が使用されている電動マッサージチェアは単価が3万台湾ドル以上と高額商品であり、消費者は購入時に高い注意を払う。
•実際の使用においては、「ISOFA」は「FUJI富士」、「VSOFA」は「輝葉HUEI YEH」等の自社ブランドと併用されており、出所は明確。
•芸能人による広告起用においても、「ISOFA」は林依晨、「VSOFA」は徐若瑄と完全に異なるタレントが使用されている。
•上訴人が提出した実際の混同事例(通達文)は証拠能力が低く、混同の発生を立証するには足りない。
以上を踏まえ、消費者の通常の注意のもとでは混同のおそれは生じないと結論づけた。
4. 判決の意義:商標類似と混同のおそれを判断する二大原則の再確認
本判決は、商標法上の「類似」の判断および「混同のおそれ」の有無について、以下の重要な原則を再確認したものである。
4.1 商標類似の判断
「商標の類否は、消費者の視点から、商標の全体的外観、観念、称呼を総合的に観察し、類似性があるか否かを判断すべきである。共通部分が識別力を欠く場合には、それ以外の要素によって識別可能性が生じる」。
4.2 混同のおそれの判断
「商標が類似であるとしても、消費者が通常の注意を払って商品を選択する際に、出所について誤認・混同するおそれがなければ、商標権侵害は成立しない」。
5. 結論
本件は、「SOFA」が識別力を欠く語であることを前提に、商標の前方部分の識別性および観念的差異を重視し、商標の類似性を否定した判決である。特に、商標の共通部分が非識別的である場合、商標全体の観察が極めて重要であるという点が明確に示された。
加えて、実際の使用状況・ブランド併記・消費者の注意水準などを加味し、混同のおそれも否定された点は、商標紛争における実務判断に大きな指針を与えるものである。