一、判決番号:最高行政法院111(2022)年度上字第117号
二、係争実用新案:M576806活性化装置を備えるバックパート成形機
三、争点:証拠の組み合わせにより係争実用新案が容易に完成するものであると証明できるか?
四、上訴人の主張:原判決では係争実用新案が簡単な変更である理由が説明されていない
係争実用新案請求項1の要点は、従来の靴製造機器が抱える作業効率の低下という問題を解決するために、従来の靴のバックパート成形機にはない「活性化装置」(51)を従来の「ホットプレス装置」(31)、「コールドプレス装置」(41)および「靴型装置」(61)と統合したものであるという点にあり、仮に、当該考案が証拠3のアッパー活性化装置の構造を証拠2のアッパー成形機に統合したものであるというのなら、原判決において、これらの複数の機構を統合した装置が、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって、先行技術によって動機づけられ、容易に完成できるものであると言える理由が説明されるべきである。原判決では、簡単な位置変更に過ぎないと判断するのみであることから、判決理由の不備という違法性に加え、進歩性判断の原則にも違反している。
五、係争実用新案の登録請求の範囲
請求項1:ヒールカウンター部を含むアッパーに適用される活性化装置を備えるバックパート成形機であって、前記活性化装置を備えるバックパート成形機はフレーム装置、少なくとも1つのホットプレス装置31、少なくとも1つのコールドプレス装置41、少なくとも1つの活性化装置51および複数の靴型装置61を含み、前記少なくとも1つのホットプレス装置31は、前記フレーム装置に設置されるホットプレス駆動部と、前記ホットプレス駆動部に接続して前記ホットプレス駆動部に駆動され前記アッパーに圧力をかける樹脂モールドユニットと、前記樹脂モールドユニットに設置されて前記アッパーの温度を上昇させる加熱ユニットを含み、前記少なくとも1つのコールドプレス装置41は、前記フレーム装置に設置されたコールドプレス駆動部と、前記コールドプレス駆動部に接続して前記コールドプレス駆動部に駆動されて前記アッパーに圧力をかけるプレス成形ユニットと、前記フレーム装置に設置され、前記プレス成形ユニットに対応して前記アッパーの温度を低下させる冷凍ユニットを含み、前記少なくとも1つの活性化装置51は、前記フレーム装置に設置されて前記アッパーを装着するためのヒートモールドと、空気を吹き付けるための送風機と、前記ヒートモールドと前記送風機の間に設置されて空気を前記ヒートモールドに導くための導流管と、前記導流管内部に設置されて温度を上昇させる昇温部を含み、前記ヒートモールドは空気を導流管から外部に流すための複数の通気孔を有し、前記アッパーが前記ヒートモールドに装着されると、前記複数の通気孔は前記ヒールカウンターに対応し、前記複数の靴型装置61の各靴型装置は、前記フレーム装置に設置されるベースと、前記ベースに設置されて前記アッパーを装着るための靴型を含み、前記複数の靴型はそれぞれ前記ホットプレス装置及び前記コールドプレス装置に対応し、前記コールドプレス装置に対応する前記靴型は前記冷凍ユニットに接続して前記冷凍ユニットによって冷却される、活性化装置を備えるバックパート成形機。
請求項2:前記活性化装置は、前記フレームに設置されて前記ヒートモールドに隣接するセンサーをさらに含み、前記アッパーが前記ヒートモールドに装着されると、前記センサーは信号を発信して前記送風機を起動させるように制御し、前記アッパーが前記ヒートモールドから離れると、前記センサーは信号を発信して前記送風機を停止させるように制御する、請求項1に記載の活性化装置を備えるバックパート成形機。
請求項3:前記活性化装置は前記フレーム装置に設置され、前記ヒートモールドの外側を取り囲み、前記ヒートモールドに隣接し、前記複数の通気孔に対応する集熱カバーをさらに含む、請求項2に記載の活性化装置を備えるバックパート成形機。
六、法院(裁判所)の見解
原審で証拠2、3、5の技術内容を検討した結果、証拠2、3、5はいずれも靴のアッパーの成形技術に関するものであり、技術分野が関連していることと、証拠2、3、5の技術はいずれも加熱工程によりアッパーを軟化させ、その後の加工工程を容易にするものであることと、証拠2、5は加熱工程によりアッパーを軟化させた後、コールドプレス工程により成形できることを開示したものであることから、証拠2、3、5は作用および効果に共通性があると認められた。 また、証拠3では、活性化装置を使用してアッパーを成形する前にアッパーを予熱する技術が開示されており、これは、アッパー成形前にアッパーを予熱する目的を達成するための教示的作用を証拠2にもたらすものである。さらに、証拠5では、熱加工装置と冷却加工装置をメインベースとサブベースとに分けて配置する技術が開示されており、これも、ホットプレスモジュールとコールドプレスモジュールを別々に設置する技術を教示する作用を証拠2にもたらすものである。したがって、当該考案の属する技術分野における通常の知識を有する者は、証拠3、5の技術的教示に動機づけられ、証拠2、3、5に開示された技術的特徴を単純に組み合わせて、簡単な変更を加えることで、係争実用新案の請求項1の考案を容易に完成させることができ、係争実用新案の請求項1は、先行技術と比較して、何らの有利な効果を有するものではない。(最高行政法院111(2022)年度上字第117号の行政判決を参照)
七、結論
特許・実用新案実務では、多くの装置を統合し、権利保護のために新規の設備として出願されることはよくある。本判決は、この種の統合型装置の発明・考案を出願する際に注意すべき要点についての参考となる。
様々な装置を統合した例として挙げる本件の考案は、従来の靴のバックパート成形機にはない「活化装置」(51)と、従来の「ホットプレス装置」(31)、「コールドプレス装置」(41)、「靴型装置」(61)が統合された設備である。係争実用新案を立案した際、当該設備の主要な構成要素を独立請求項に記載したのは、より広い権利保護範囲を得るためと考えられる。請求項1の記載は長く、一見すると多くの技術的特徴を含んでいるように見えるが、内容を詳細に分析すると、それらのほとんどが各構成要素の機能を説明しているに過ぎない。そして、主要な構成要素と統合された構成要素(活性化装置)との間の特殊な技術手段は、従属請求項を利用して異なるレベルで積み重ねる形で記載されている。つまり、このような統合型装置についての裁判では、証拠に基づき判断される際、構成要素がすべて同一または関連する分野、技術的手段、効果であることから、「当該考案の属する技術分野における通常の知識を有する者は、証拠の技術的教示に動機づけられ、証拠に開示された技術的特徴を単純に組み合わせて簡単な変更を加えることで、係争実用新案を容易に完成させることができる」という理由で当該権利が無効と判断される可能性が高くなる。しかし、従属項においてより細かい制限を加えた場合(係争実用新案請求項2、3)、無効と判断されにくくなる。
上述の内容をまとめると、このような統合型装置の特許・実用新案出願を行う際は、各構成要素と重要な構成要素の組み合わせに応じて、さまざまな観点から複数の異なる独立請求項を策定することが可能である。そして、重要な構成要素と各構成要素を組み合わせる際、克服すべき細かい技術的課題に対応する技術手段の特徴を従属項として策定することにより、審査官が独立請求項の範囲が広すぎると判断した場合でも、いくつかの技術的特徴を段階的に限縮することで対応できる。