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先発メーカーの基幹特許が順次満了する中、台湾の製薬企業は、これまでに培ってきた市場基盤、ジェネリック(後発)医薬品の開発技術、販売チャネルを活用し、自社ブランドの後発医薬品展開を検討するケースが増えている。本稿では、特許面を中心に、商標面も含めて、台湾の製薬企業が転換過程において留意すべき重要な論点と戦略を考察する。

多くの台湾製薬企業は、当初、先発メーカーとライセンス契約を締結し、台湾における製造・販売・輸入等の実施について適法な許諾を得て、「販売代理店」としての役割を担ってきた。先発メーカーの基幹特許が段階的に満了するにつれ、これらの企業は、既存の市場基盤、後発医薬品の開発技術、販売チャネルを統合し、自社ブランドの後発医薬品展開へと舵を切るようになっている。
しかし、特許満了が直ちに自由な市場参入を可能にするわけではない。先発メーカーが第2層・第3層の特許で保護を図っている場合があるほか、他の競合企業が製剤や製造方法に関する特許を取得し、将来の市場シェアを確保している可能性もある。以下では、特許を中心に商標も含めて、台湾の製薬企業が転換過程において注意すべき重要な論点と戦略を考察する。
一、特許戦略:核心成分から製剤・用途・競合特許まで
1. 核心成分特許が満了しても自由に参入できるとは限らない
後発品開発の可否を判断する第一歩は、先発品の新有効成分特許(Active Ingredient / Compound Patent)の満了確認である。しかし、成分特許の満了だけでは直ちに製造・上市が可能になるわけではない。例えば次のような特許が残存する可能性がある。
・製剤(Formulation)特許や製法特許:特定な徐放技術、特定な組成、製造プロセス等
・用途(適応症)特許:成分特許が満了しても、同一適応症であれば用途特許に抵触する可能性がある
・賦形剤関連特許:賦形剤自体が独立した特許である場合や、薬物との独自配合が特許保護されている場合
したがって、台湾企業が「台湾市場で適法に製造・販売できるか」を判断する際には、先発メーカーの特許のみならず、第三者出願も含めた包括的な事業実施可能性調査(Freedom to Operate:FTO)が不可欠である。
2. 競合特許への対応策
基幹特許が満了しても他の特許により市場参入が阻まれ、後発品を円滑に投入できない場合、次のような対応が考えられる。
・製剤・製法の変更:既存特許との差別化により、侵害リスクを回避する
・ライセンス交渉:製剤・用途特許が有効期間中であれば、権利者と実施許諾を協議する
・特許無効化の試み:台湾では経済部智慧財産局への無効審判請求や、訴訟における無効の抗弁が可能。海外(特に米国)ではInter Partes Review(IPR)等の手段を活用できる
二、特許チャレンジ:台湾から米国へ広がる多層的戦略
1. 台湾における無効手続
・無効審判請求:経済部智慧財産局に対し特許の無効を主張し、全部または一部の取消しを求める
・侵害訴訟における無効の抗弁:権利者から侵害訴訟を提起された場合、裁判所で特許の無効・進歩性欠如等を主張できる
ただし、市場の中心が米国にある場合、台湾のみでの無効手続では全体戦略として不十分なことがあるため、米国での手続も視野に入れることが推奨される。
2. 米国における無効手続
米国は多くの先発医薬品企業の本拠地であり、特許保護は概して強固である。米国の無効制度の中でも、Inter Partes Review(IPR)は米国特許商標庁(USPTO)傘下のPatent Trial and Appeal Board(PTAB)が実施する手続であり、以下の特徴がある。
・当事者間での複数ラウンドの攻防:先行技術文献に基づき、新規性・進歩性欠如を主張できる
・和解・ライセンス交渉の柔軟性:IPR手続の過程で権利者が敗訴リスクを認識すれば、和解やライセンス交渉に応じ、後発品の早期上市に合意する可能性がある
台湾企業にとって、米国で大きな売上が見込めない場合でも、米国の無効制度を戦略的に活用することで、先発メーカーに譲歩を促し、より柔軟な実施許諾や市場参入の機会を獲得できる可能性がある。
三、商標戦略の構築
自社ジェネリックへ移行する際、長期的なブランド価値の構築には商標戦略が不可欠である。
1.先発メーカーとのライセンス契約の確認:先発メーカーの商標使用に関する制限・義務を把握する。自社生産へ移行後は、通常、先発メーカーの商標を継続使用できない
2.自社ブランドの開発と商標出願:発売前に、製品名や企業ブランドについて、国内および主要輸出市場で早期に商標を出願する
3.一貫したブランド展開:海外展開を視野に入れる場合、海外での商標出願も並行して進め、将来の紛争リスクを抑制する
四、結語
先発メーカーからのライセンス販売を行ってきた台湾の製薬企業が、「販売代理」から「自社開発の後発医薬品」へと発展するには、特許を主軸とし、商標を補完とする総合的な戦略が求められる。先発メーカーおよび潜在的競合企業の特許を精査し、満了済みまたは無効化の余地がある特許を見極め、適時に無効制度(IPR・無効審判)やライセンス交渉を活用することで、侵害リスクや上市遅延のリスクを低減することが重要である。同時に、自社ブランドの商標登録とブランドイメージの形成を計画的に進めることで、特許満了後の激しい市場競争において優位性を確立し、一歩先んじることが可能となる。