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企業は、ブランドリニューアル又はCIS(Corporate Identity System/企業識別システム)の変更に伴い、登録時とは異なる態様で商標を使用することがある。しかし、実際の使用態様が登録商標と異なる場合、その使用が登録商標の使用として認められるかどうかは、商標権の維持において極めて重要な問題である。
法律上、実際に使用されている商標が登録商標と完全に同一でなくても、登録商標の要部、すなわち主要な識別部分が維持されていれば、登録商標と社会通念上同一の商標の使用として認められる可能性がある。
もっとも、何が商標の「要部」又は「主要な識別部分」に当たるかは、個別事案における行政機関及び裁判所の判断に左右される。そのため、商標権者が長年使用してきた商標であっても、登録商標との同一性が否定されれば、不使用を理由として登録が取り消されるリスクがある。
本稿では、実際の裁判例を通じて、裁判所がどのような基準により商標の使用及び同一性を判断しているかを整理し、実際の使用態様に合わせて新たに商標登録出願を行うことの重要性について説明する。
事例一:知的財産及び商業裁判所112年度行商訴字第59号判決

商標登録が取消処分を受けた場合でも、必ずしも救済の余地がないわけではない。本件では、台湾智慧財産局及び訴願機関のいずれも商標登録を取り消すべきであると判断したが、裁判所は商標権者が提出した証拠に基づき、登録商標の使用事実を認め、行政機関の判断を覆した。
商標権者が提出した証拠は、登録商標の使用事実を証明するに足りるものであった
裁判所が登録商標の使用を認めた理由
裁判所は、本件登録商標の要部は、図案化された「A」及びその右側に配置された「ATEC」の文字部分にあると判断した。
実際の使用態様においては、登録商標に加えて、比較的小さい文字で「international team co.,ltd.」及び中国語の会社名「廣力達企業有限公司」が併記されていた。しかし、複数の商標又は標章を組み合わせて使用することは、市場において一般的に見られる使用態様である。
また、追加された会社名等の文字は比較的小さく、商標全体の外観、配置及び印象に照らして、登録商標の要部を実質的に変更するものではないと判断された。そのため、裁判所は、実際の使用態様は登録商標と社会通念上同一と認められる範囲にあり、登録商標の使用事実があると認定した。
事例二:知的財産及び商業裁判所113年度行商訴字第4号判決

商標権者が提出した証拠は、登録商標の使用事実を証明するには不十分であった
商標権者は、工場看板、商品の外装袋、商品の紙箱写真等を提出し、登録商標の主要な識別部分である「正豐」の文字を使用していると主張した。また、登録商標中の「鳳梨図」(パイナップルの図案)は単なる装飾的図形にすぎず、商標の要部ではないため、登録商標の使用が認められるべきであると主張した。
しかし、台湾智慧財産局、訴願機関及び裁判所はいずれも、商標権者の主張を採用しなかった。
裁判所は、登録商標と実際の使用態様との間に形式的な差異がある場合であっても、その差異が商標図様の大きさ、比率、書体又は配置方法等にとどまり、商標の要部を変更するものではない場合には、登録商標と社会通念上同一と認められる余地があるとした。
一方で、登録商標中の目立つ主要部分を削除し、又は異なる態様に変更して使用した結果、登録商標全体から受ける印象と実際の使用態様から受ける印象との間に顕著な差異が生じる場合には、登録商標との同一性は認められないとした。
以下、商標権者が提出した各証拠について、裁判所の判断を整理する。
1.答証3、5、6について

裁判所は、これらの証拠に示された使用態様は、登録商標と社会通念上同一とは認められず、登録商標の主要な識別部分を実質的に変更するものであると判断した。
2.商品外装について

答証9、11、25、55、56についても、裁判所は、登録商標との同一性を否定し、登録商標の主要な識別部分を実質的に変更する使用態様であると判断した。
裁判所は、登録商標中の「鳳梨図」と、答証9、11、25、55、56の写真に示された商品包装上の「鳳梨図」とは態様が同一ではなく、かつ「正豐」の文字のみが独立して表示されているわけでもないと指摘した。そのため、これらの使用態様は、登録商標と社会通念上同一とは認められないと判断された。
3.カラー包装について

訴願証11についても、裁判所は、登録商標との同一性を否定した。
当該包装上には「正豐牌(黃金N-38)」の文字が表示されていたが、これは登録商標中の「正豐」の文字とは異なる。また、農作物の図案が組み込まれた鳳梨図も、登録商標中の鳳梨図とは明らかに異なると判断された。
そのため、裁判所は、当該使用態様は登録商標と社会通念上同一とはいえず、登録商標の使用事実を証明するものではないと認定した。
事例三:知的財産及び商業裁判所112年度行商訴字第30号判決

商標権者が提出した証拠は、登録商標の使用事実を証明するに足りるものであった
商標権者は、商品の販売統計表及び商品写真、台湾の消費者による注文インボイス及び商品写真、公式ウェブサイトの商品ページ等を提出し、登録商標を使用していることを主張した。
裁判所の判断
1.実際の使用態様1及び2について
実際の使用態様1における「USAPRO」又は「USAPro」、及び実際の使用態様2における図案化された「USAPRO」の文字について、裁判所は、いずれも英文字の大文字・小文字又は外観上のデザインに若干の差異があるにすぎないと判断した。
これらの差異は、登録商標「USA PRO」の要部を変更するものではないため、実際の使用態様は登録商標と社会通念上同一であると認定された。
2.実際の使用態様3について
実際の使用態様3では、登録商標中の左側に配置された3本のカラー長条図形は使用されておらず、外側が広く内側が狭い形状にデザインされた「USA PRO」の文字部分のみが使用されていた。
しかし、裁判所は、左側の3本のカラー長条図形について、直接称呼することができず、商標全体において比較的目立たない構成部分であると判断した。すなわち、当該図形部分は商標の要部ではなく、付随的な構成部分にすぎないとされた。
一方、実際の使用態様では、登録商標の中心的な識別力を有する「USA PRO」の文字部分が使用されていた。そのため、裁判所は、登録商標の要部は維持されており、実際の使用態様は登録商標と社会通念上同一であると認定した。その結果、商標登録は維持された。
結論
以上の裁判例から分かるように、実際に使用している商標が登録時の商標と完全に一致していなくても、登録商標の要部、すなわち主要な識別部分が維持されていれば、登録商標と社会通念上同一の商標の使用として認められる可能性がある。
しかし、実務上問題となるのは、どの部分が商標の要部に当たるかである。この点は、個別事案における商標の構成、実際の使用態様、取引の実情、証拠の内容等を総合的に考慮して判断されるため、商標権者の認識と行政機関又は裁判所の判断が一致しないこともある。
そのため、企業がブランドリニューアル又はCISの変更により、登録商標とは異なる態様で商標を使用する場合には、単に「登録商標の要部は維持されている」と考えるだけでは十分ではない。
商標権をより確実に保護するためには、実際に使用している商標態様に合わせて、新たに商標登録出願を行うことが望ましい。事後的に不使用取消審判等の手続において、登録商標との同一性を争うよりも、実際の使用態様についてあらかじめ商標登録を受けておくことが、商標権を安定的に維持するための最も安全な対応である。
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