台湾最高法院114年度台上字第452号民事判決
台湾の最高法院は、「BURBERRY」商標を付した模倣品がテレビショッピング及びオンラインショッピングを通じて販売された事件について、商標権侵害による損害賠償額の算定方法に関する重要な判断を示した。
本件では、商品供給会社とショッピング会社が共同して商標権を侵害した場合に、侵害行為によって得た利益をどのように計算すべきか、複数種類の侵害品の小売単価が異なる場合に平均単価を採用できるか、さらに、法人が商業上の名誉を侵害されたことを理由として非財産上の損害賠償を請求できるかが争われた。
最高法院は、原審の損害賠償額に関する判断の一部に法令適用上の問題があるとして、原判決の一部を破棄し、知的財産及び商業法院に差し戻した。
1.事件の概要
原告は、「BURBERRY」商標の商標権者である英国法人であり、当該商標は、バッグ、ハンドバッグ、財布、時計及びスカーフ等の商品について登録されていた。
被告である商品供給会社は、テレビショッピング及びオンラインショッピングを運営する会社を通じて、「BURBERRY」商標を付したバッグ、時計及びスカーフ等を販売していた。
原告がショッピングサイトから商品を購入して調査したところ、当該商品が正規品ではないことが判明した。また、警察による捜索では、商品供給会社の事業所から、「BURBERRY」商標を付したバッグ、スカーフ、時計、時計ケース、紙袋及び保証書等が押収された。
原審は、商品供給会社が模倣品を供給しただけでなく、ショッピング会社も商品の真正性を確認するために必要な注意を尽くさず、模倣品を販売したとして、両社による共同過失の商標権侵害を認定した。
最高法院も、ショッピング会社が善良な管理者として必要な注意義務を尽くしていなかったとの原審の認定については違法がないと判断した。そのため、模倣品の販売差止め及び判決内容の新聞掲載を命じた部分については、ショッピング会社の上告を退けた。
2.争点1:共同侵害者の利益はどのように計算するか
台湾商標法第71条第1項第2号によれば、商標権者は、侵害者が商標権侵害行為によって得た利益を基礎として、損害賠償額を計算することができる。
本件の原審は、ショッピング会社が模倣品を販売して得た売上額から、商品供給会社に支払った仕入代金を控除し、その残額をショッピング会社が得た利益として損害額を算定した。
これに対し、最高法院は、複数人が共同して他人の権利を侵害した場合、各共同侵害者は、被害者に対して損害の全部について連帯責任を負うと指摘した。
したがって、商標法第71条第1項第2号に基づき、共同侵害行為によって得た利益を損害額として計算する場合には、共同侵害者全体が侵害行為によって得た利益を基準としなければならない。
共同侵害者間における内部的な責任分担、利益配分又は受益割合によって、商標権者に対する賠償範囲を縮減することはできないのである。
本件では、ショッピング会社が商品供給会社に支払った仕入代金は、他の共同侵害者である商品供給会社が取得した金額である。そのため、当該金額を単にショッピング会社側の費用として控除し、共同侵害者全体が得た利益の算定対象から除外することはできない。
最高法院は、原審が各共同侵害者に実際に残った利益のみを個別に計算し、ショッピング会社の売上額から商品供給会社に支払った金額を控除したことについて、共同侵害者全体の利益を適切に把握していないとして、原審の判断に問題があるとした。
もっとも、最高法院は、ショッピング会社の売上総額が当然にそのまま損害賠償額になると判断したものではない。差戻審では、共同侵害者全体が侵害行為によって得た利益の範囲を改めて調査し、具体的な損害額を算定する必要がある。
3.争点2:小売単価が異なる場合に平均単価を採用できるか
台湾商標法第71条第1項第3号によれば、商標権者は、押収された侵害品の小売単価の1,500倍以下の金額を損害額として請求することができる。
ただし、押収された侵害品が1,500点を超える場合には、その商品の総額を基準として賠償額を算定することになる。
本件では、押収された商品に、バッグ、時計及びスカーフ等の複数種類の商品が含まれており、商品ごとに小売単価が異なっていた。
原審は、複数種類の侵害品の小売単価が異なる場合には、各商品の小売単価の平均値を計算の基礎とすべきであると考えた。
しかし、一部の時計について小売単価を確認できず、適切な平均小売単価を算出することができなかったため、原審は、商標法第71条第1項第3号による損害額の算定を認めなかった。
これに対し、最高法院は、同号にいう「小売単価」とは、押収された各侵害品の一個当たりの小売単価を意味すると判断した。
したがって、複数種類の侵害品の小売単価が異なる場合には、すべての商品の価格を平均して一つの単価を設定するのではなく、それぞれの侵害品について、各商品の小売単価を基礎として倍数額を計算しなければならない。
各商品の小売単価に基づいて算定した結果、賠償額が明らかに不相当となる場合には、裁判所は商標法第71条第2項に基づいて、その賠償額を減額することができる。
すなわち、法定の計算方法に従って商品別に損害額を算定することと、その結果が過大である場合に裁判所が減額することは、別の問題である。
賠償額を調整するために、計算の出発点となる各商品の小売単価を平均化することは認められない。
最高法院は、原審が平均小売単価を算出できないことを理由として、同号による損害賠償額の算定自体を否定したことについて、十分な検討を欠くものと判断した。
4.争点3:法人は非財産上の損害賠償を請求できるか
原告は、低品質の模倣品が大量に販売されたことにより、長年にわたり高級ブランドとして構築してきたファッション性、上品さ及び優れた品質に関する信用が著しく損なわれたとして、非財産上の損害賠償も請求した。
これに対し、原審は、法人には自然人のような精神的苦痛が生じないこと、及び原告が商業上の名誉が損なわれた具体的な価値を証明していないことを理由として、この請求を認めなかった。
しかし、最高法院は、法人であっても名誉を享有することができると指摘した。
生命、身体、健康、自由及び肖像等の権利は、自然人に専属する人格権であるため、法人がこれらの権利を享有することはできない。他方、名誉は自然人にのみ専属するものではなく、法人にも認められ得る。
現代社会では、法人の事業活動は国際化及び多様化し、組織規模も拡大している。また、インターネット及びマスメディアを通じて情報が迅速かつ広範囲に伝達されるため、法人の名誉が侵害された場合、その影響が長期間かつ広範囲に及び、法人の設立目的の達成に重大な影響を与えることもある。
もっとも、法人は自然人のような感情又は精神的苦痛を有しないため、法人に認められる非財産上の損害は、自然人の場合とは内容が異なる。
最高法院は、法人が民法第195条第1項に基づいて非財産上の損害賠償を請求するためには、名誉侵害によって、法人の設立目的の達成に重大な影響を及ぼす損害が生じ、かつ当該損害を金銭的に評価することが困難であることが必要であるとした。
この判断は、本件において初めて示されたものではなく、最高法院112年度台上大字第544号大法庭裁定によって統一された法律見解を、本件の商標権侵害事件に適用したものである。
したがって、原告が法人であるという理由だけで、非財産上の損害賠償請求を直ちに排斥することはできない。
本件では、低品質な模倣品の販売によって、原告が高級ブランドとして構築してきた信用及び商業上の名誉が損なわれ、その設立目的の達成に重大な影響が生じたかについて、事実審法院が具体的に調査する必要があるとされた。
5.最高法院は非財産上の損害賠償を直接認めたのか
この点について注意が必要である。
最高法院は、原告が請求した1,000万台湾元の非財産上の損害賠償を直接認めたものではない。また、原告に実際に非財産上の損害が生じたことや、その具体的な賠償額を確定したものでもない。
最高法院が示したのは、法人には精神的苦痛がないという理由だけで、非財産上の損害賠償請求を否定することはできないという点である。
差戻審では、模倣品の品質、販売数量、販売期間、販売経路、市場における原告ブランドの位置付け及び原告の事業活動に与えた具体的な影響等を調査し、原告の設立目的の達成に重大な影響を及ぼす、金銭的に評価することが困難な損害が生じたかを判断する必要がある。
したがって、本判決は、法人による非財産上の損害賠償請求が当然に認められるとしたものではなく、その請求が成立し得ることを前提として、原審に具体的な事実の調査を求めた判決である。
6.最高法院の結論
最高法院は、原審の損害賠償額に関する判断について、主に次の三点に問題があるとした。
第一に、共同侵害者が侵害行為によって得た利益を算定する際には、各共同侵害者に最終的に残った利益を個別に計算するのではなく、共同侵害者全体が得た利益を基準として判断しなければならない。
第二に、小売単価の異なる複数種類の侵害品については、平均小売単価ではなく、各商品の小売単価を基礎として損害額を算定しなければならない。算定結果が明らかに不相当である場合には、平均単価を採用するのではなく、商標法第71条第2項に基づく減額によって調整すべきである。
第三に、法人であっても、名誉侵害によって、その設立目的の達成に重大な影響を及ぼす、金銭的に評価することが困難な損害を受けた場合には、非財産上の損害賠償を請求し得る。
以上の理由から、最高法院は、損害賠償額に関する原判決の一部を破棄し、知的財産及び商業法院に差し戻した。
一方、ショッピング会社が商品の真正性について必要な注意を尽くさず、共同過失によって商標権を侵害したとの認定並びに模倣品の販売差止め及び判決内容の新聞掲載を命じた部分については、原審の判断に違法はないとして、ショッピング会社の上告を退けた。
7.実務上の示唆
本判決は、台湾における商標権侵害訴訟の損害賠償について、共同侵害行為全体の経済的実態を重視すべきことを示したものである。
商品供給会社、輸入業者、販売会社及び電子商取引プラットフォーム等が共同して侵害品を流通させた場合、共同侵害者間の契約関係や会計上の利益配分だけを理由として、商標権者に対する損害賠償額を縮減することはできない。
また、商標法第71条第1項第3号に基づく損害賠償を請求する場合には、押収された侵害品について、商品の種類、小売単価及び数量を個別に整理することが重要である。
一部の商品について小売単価を確認できない場合であっても、直ちに平均単価による計算へ切り替えるのではなく、商品ごとの証拠及び価格資料を検討し、法定の計算方法に従って損害額を算定する必要がある。
さらに、法人が商業上の名誉を侵害されたとして非財産上の損害賠償を請求する場合には、単にブランドイメージ又は信用が低下したと主張するだけでは十分ではない。
侵害行為の規模、継続期間、販売経路、侵害品の品質、市場におけるブランドの位置付け、消費者の認識及び法人の事業活動に生じた具体的な影響等を立証し、その損害が法人の設立目的の達成に重大な影響を及ぼすものであることを示す必要がある。
本判決は、共同侵害者間の内部的な取引形式ではなく、共同侵害行為全体によって生じた利益及び商標権者が受けた実質的な影響を基礎として、損害賠償の範囲を判断すべきことを示した重要な判決である。「BURBERRY」商標権侵害事件
共同侵害者の利益算定、商品別小売単価及び法人の非財産上の損害
台湾最高法院114年度台上字第452号民事判決
台湾の最高法院は、「BURBERRY」商標を付した模倣品がテレビショッピング及びオンラインショッピングを通じて販売された事件について、商標権侵害による損害賠償額の算定方法に関する重要な判断を示した。
本件では、商品供給会社とショッピング会社が共同して商標権を侵害した場合に、侵害行為によって得た利益をどのように計算すべきか、複数種類の侵害品の小売単価が異なる場合に平均単価を採用できるか、さらに、法人が商業上の名誉を侵害されたことを理由として非財産上の損害賠償を請求できるかが争われた。
最高法院は、原審の損害賠償額に関する判断の一部に法令適用上の問題があるとして、原判決の一部を破棄し、知的財産及び商業法院に差し戻した。
1.事件の概要
原告は、「BURBERRY」商標の商標権者である英国法人であり、当該商標は、バッグ、ハンドバッグ、財布、時計及びスカーフ等の商品について登録されていた。
被告である商品供給会社は、テレビショッピング及びオンラインショッピングを運営する会社を通じて、「BURBERRY」商標を付したバッグ、時計及びスカーフ等を販売していた。
原告がショッピングサイトから商品を購入して調査したところ、当該商品が正規品ではないことが判明した。また、警察による捜索では、商品供給会社の事業所から、「BURBERRY」商標を付したバッグ、スカーフ、時計、時計ケース、紙袋及び保証書等が押収された。
原審は、商品供給会社が模倣品を供給しただけでなく、ショッピング会社も商品の真正性を確認するために必要な注意を尽くさず、模倣品を販売したとして、両社による共同過失の商標権侵害を認定した。
最高法院も、ショッピング会社が善良な管理者として必要な注意義務を尽くしていなかったとの原審の認定については違法がないと判断した。そのため、模倣品の販売差止め及び判決内容の新聞掲載を命じた部分については、ショッピング会社の上告を退けた。
2.争点1:共同侵害者の利益はどのように計算するか
台湾商標法第71条第1項第2号によれば、商標権者は、侵害者が商標権侵害行為によって得た利益を基礎として、損害賠償額を計算することができる。
本件の原審は、ショッピング会社が模倣品を販売して得た売上額から、商品供給会社に支払った仕入代金を控除し、その残額をショッピング会社が得た利益として損害額を算定した。
これに対し、最高法院は、複数人が共同して他人の権利を侵害した場合、各共同侵害者は、被害者に対して損害の全部について連帯責任を負うと指摘した。
したがって、商標法第71条第1項第2号に基づき、共同侵害行為によって得た利益を損害額として計算する場合には、共同侵害者全体が侵害行為によって得た利益を基準としなければならない。
共同侵害者間における内部的な責任分担、利益配分又は受益割合によって、商標権者に対する賠償範囲を縮減することはできないのである。
本件では、ショッピング会社が商品供給会社に支払った仕入代金は、他の共同侵害者である商品供給会社が取得した金額である。そのため、当該金額を単にショッピング会社側の費用として控除し、共同侵害者全体が得た利益の算定対象から除外することはできない。
最高法院は、原審が各共同侵害者に実際に残った利益のみを個別に計算し、ショッピング会社の売上額から商品供給会社に支払った金額を控除したことについて、共同侵害者全体の利益を適切に把握していないとして、原審の判断に問題があるとした。
もっとも、最高法院は、ショッピング会社の売上総額が当然にそのまま損害賠償額になると判断したものではない。差戻審では、共同侵害者全体が侵害行為によって得た利益の範囲を改めて調査し、具体的な損害額を算定する必要がある。
3.争点2:小売単価が異なる場合に平均単価を採用できるか
台湾商標法第71条第1項第3号によれば、商標権者は、押収された侵害品の小売単価の1,500倍以下の金額を損害額として請求することができる。
ただし、押収された侵害品が1,500点を超える場合には、その商品の総額を基準として賠償額を算定することになる。
本件では、押収された商品に、バッグ、時計及びスカーフ等の複数種類の商品が含まれており、商品ごとに小売単価が異なっていた。
原審は、複数種類の侵害品の小売単価が異なる場合には、各商品の小売単価の平均値を計算の基礎とすべきであると考えた。
しかし、一部の時計について小売単価を確認できず、適切な平均小売単価を算出することができなかったため、原審は、商標法第71条第1項第3号による損害額の算定を認めなかった。
これに対し、最高法院は、同号にいう「小売単価」とは、押収された各侵害品の一個当たりの小売単価を意味すると判断した。
したがって、複数種類の侵害品の小売単価が異なる場合には、すべての商品の価格を平均して一つの単価を設定するのではなく、それぞれの侵害品について、各商品の小売単価を基礎として倍数額を計算しなければならない。
各商品の小売単価に基づいて算定した結果、賠償額が明らかに不相当となる場合には、裁判所は商標法第71条第2項に基づいて、その賠償額を減額することができる。
すなわち、法定の計算方法に従って商品別に損害額を算定することと、その結果が過大である場合に裁判所が減額することは、別の問題である。
賠償額を調整するために、計算の出発点となる各商品の小売単価を平均化することは認められない。
最高法院は、原審が平均小売単価を算出できないことを理由として、同号による損害賠償額の算定自体を否定したことについて、十分な検討を欠くものと判断した。
4.争点3:法人は非財産上の損害賠償を請求できるか
原告は、低品質の模倣品が大量に販売されたことにより、長年にわたり高級ブランドとして構築してきたファッション性、上品さ及び優れた品質に関する信用が著しく損なわれたとして、非財産上の損害賠償も請求した。
これに対し、原審は、法人には自然人のような精神的苦痛が生じないこと、及び原告が商業上の名誉が損なわれた具体的な価値を証明していないことを理由として、この請求を認めなかった。
しかし、最高法院は、法人であっても名誉を享有することができると指摘した。
生命、身体、健康、自由及び肖像等の権利は、自然人に専属する人格権であるため、法人がこれらの権利を享有することはできない。他方、名誉は自然人にのみ専属するものではなく、法人にも認められ得る。
現代社会では、法人の事業活動は国際化及び多様化し、組織規模も拡大している。また、インターネット及びマスメディアを通じて情報が迅速かつ広範囲に伝達されるため、法人の名誉が侵害された場合、その影響が長期間かつ広範囲に及び、法人の設立目的の達成に重大な影響を与えることもある。
もっとも、法人は自然人のような感情又は精神的苦痛を有しないため、法人に認められる非財産上の損害は、自然人の場合とは内容が異なる。
最高法院は、法人が民法第195条第1項に基づいて非財産上の損害賠償を請求するためには、名誉侵害によって、法人の設立目的の達成に重大な影響を及ぼす損害が生じ、かつ当該損害を金銭的に評価することが困難であることが必要であるとした。
この判断は、本件において初めて示されたものではなく、最高法院112年度台上大字第544号大法庭裁定によって統一された法律見解を、本件の商標権侵害事件に適用したものである。
したがって、原告が法人であるという理由だけで、非財産上の損害賠償請求を直ちに排斥することはできない。
本件では、低品質な模倣品の販売によって、原告が高級ブランドとして構築してきた信用及び商業上の名誉が損なわれ、その設立目的の達成に重大な影響が生じたかについて、事実審法院が具体的に調査する必要があるとされた。
5.最高法院は非財産上の損害賠償を直接認めたのか
この点について注意が必要である。
最高法院は、原告が請求した1,000万台湾元の非財産上の損害賠償を直接認めたものではない。また、原告に実際に非財産上の損害が生じたことや、その具体的な賠償額を確定したものでもない。
最高法院が示したのは、法人には精神的苦痛がないという理由だけで、非財産上の損害賠償請求を否定することはできないという点である。
差戻審では、模倣品の品質、販売数量、販売期間、販売経路、市場における原告ブランドの位置付け及び原告の事業活動に与えた具体的な影響等を調査し、原告の設立目的の達成に重大な影響を及ぼす、金銭的に評価することが困難な損害が生じたかを判断する必要がある。
したがって、本判決は、法人による非財産上の損害賠償請求が当然に認められるとしたものではなく、その請求が成立し得ることを前提として、原審に具体的な事実の調査を求めた判決である。
6.最高法院の結論
最高法院は、原審の損害賠償額に関する判断について、主に次の三点に問題があるとした。
第一に、共同侵害者が侵害行為によって得た利益を算定する際には、各共同侵害者に最終的に残った利益を個別に計算するのではなく、共同侵害者全体が得た利益を基準として判断しなければならない。
第二に、小売単価の異なる複数種類の侵害品については、平均小売単価ではなく、各商品の小売単価を基礎として損害額を算定しなければならない。算定結果が明らかに不相当である場合には、平均単価を採用するのではなく、商標法第71条第2項に基づく減額によって調整すべきである。
第三に、法人であっても、名誉侵害によって、その設立目的の達成に重大な影響を及ぼす、金銭的に評価することが困難な損害を受けた場合には、非財産上の損害賠償を請求し得る。
以上の理由から、最高法院は、損害賠償額に関する原判決の一部を破棄し、知的財産及び商業法院に差し戻した。
一方、ショッピング会社が商品の真正性について必要な注意を尽くさず、共同過失によって商標権を侵害したとの認定並びに模倣品の販売差止め及び判決内容の新聞掲載を命じた部分については、原審の判断に違法はないとして、ショッピング会社の上告を退けた。
7.実務上の示唆
本判決は、台湾における商標権侵害訴訟の損害賠償について、共同侵害行為全体の経済的実態を重視すべきことを示したものである。
商品供給会社、輸入業者、販売会社及び電子商取引プラットフォーム等が共同して侵害品を流通させた場合、共同侵害者間の契約関係や会計上の利益配分だけを理由として、商標権者に対する損害賠償額を縮減することはできない。
また、商標法第71条第1項第3号に基づく損害賠償を請求する場合には、押収された侵害品について、商品の種類、小売単価及び数量を個別に整理することが重要である。
一部の商品について小売単価を確認できない場合であっても、直ちに平均単価による計算へ切り替えるのではなく、商品ごとの証拠及び価格資料を検討し、法定の計算方法に従って損害額を算定する必要がある。
さらに、法人が商業上の名誉を侵害されたとして非財産上の損害賠償を請求する場合には、単にブランドイメージ又は信用が低下したと主張するだけでは十分ではない。
侵害行為の規模、継続期間、販売経路、侵害品の品質、市場におけるブランドの位置付け、消費者の認識及び法人の事業活動に生じた具体的な影響等を立証し、その損害が法人の設立目的の達成に重大な影響を及ぼすものであることを示す必要がある。
本判決は、共同侵害者間の内部的な取引形式ではなく、共同侵害行為全体によって生じた利益及び商標権者が受けた実質的な影響を基礎として、損害賠償の範囲を判断すべきことを示した重要な判決である。