台湾は、半導体、電子部品、精密機械、情報通信、医療機器などの分野において、高度な研究開発力と製造能力を有している。
日本企業にとって台湾は、単なる製品の販売市場ではなく、製造委託、部品調達、共同開発および技術提携の重要な拠点でもある。そのため、台湾で事業を展開する企業や、台湾企業と取引関係を有する企業にとって、台湾における特許の取得は重要な知的財産戦略の一つとなる。
台湾で特許を取得する主なメリットは、次の3点である。
1.台湾で行われる製造や販売を保護できる
特許権には属地性があり、原則として、特許を取得した国または地域においてのみ効力を有する。
したがって、日本で特許を取得していても、その日本特許によって、台湾における第三者の製造、使用、販売または輸入を直接差し止めることはできない。台湾で行われる事業活動に対して権利を行使するためには、台湾において特許を取得しておく必要がある。
特に、最終製品が日本、米国または欧州で販売される場合であっても、その中核となる半導体、電子部品、光学部品または機械部品が台湾で製造されるケースは少なくない。
台湾において製品構造、製造装置、製造方法、材料または検査技術に関する特許を取得していれば、製品が海外へ輸出される前の製造段階において、侵害行為に対応できる可能性がある。
台湾特許は、日本企業の製品だけでなく、台湾を含むサプライチェーン全体を保護するための重要な権利である。
2.台湾企業との提携やライセンス交渉を有利に進められる
台湾特許は、第三者による模倣を排除するためだけのものではない。台湾企業との共同開発、製造委託、技術移転、ライセンス契約および投資交渉において、自社技術の価値を示す事業資産としても活用できる。
自社の技術が台湾特許によって保護されていれば、相手企業が使用できる技術の範囲、共同開発によって生じた成果の帰属、契約終了後の技術利用などについて、より明確な条件を設定しやすくなる。
また、台湾企業に特許の実施を許諾し、ライセンス料を得ることも可能である。相手企業が関連特許を保有している場合には、クロスライセンスや技術提携の交渉材料として活用することもできる。
台湾特許を保有することにより、日本企業は台湾企業との交渉において、技術の提供者としてより有利な立場を確保しやすくなる。
3.競合企業による台湾での模倣や特許取得に備えられる
台湾には高度な製造技術を有する企業が多く、日本企業と同じ技術分野で研究開発や製品製造を行う競合企業も少なくない。
自社が台湾で特許を取得していなければ、競合企業による類似製品の製造や販売に対して、十分な対応ができない可能性がある。また、競合企業が関連技術について先に台湾特許を取得した場合、自社の台湾における製造、販売または技術提携が制限されるおそれもある。
そのため、台湾出願を検討する際には、現在販売している完成品だけでなく、将来の製品展開、製造工程、部品、材料、制御方法および検査技術についても検討する必要がある。
また、日本出願の内容をそのまま台湾へ出願するだけでは、台湾における実際の製造形態や侵害行為に十分対応できない場合がある。台湾のサプライチェーンにおいて、誰が、どの工程で、どの技術を実施するのかを確認し、台湾で権利行使しやすい請求項を設計することが重要である。
まとめ
台湾における特許取得には、台湾で行われる製造や販売を保護できること、台湾企業との提携やライセンス交渉を有利に進められること、競合企業による模倣や特許取得に備えられることという3つの大きなメリットがある。
台湾との間に製造、調達、販売、共同開発または投資関係を有する日本企業にとって、台湾特許は単なる海外出願の一つではなく、事業上のリスクを管理し、自社技術の価値を高めるための重要な資産である。
台湾で事業を行う可能性がある場合には、日本国内の特許取得だけで完結させず、製品の市場、製造場所、取引先、競合企業および将来の技術展開を踏まえ、早い段階から台湾における特許取得を検討することが望ましい。