インターネット上で販売された商標権侵害品について、自ら販売行為を行っていなくても、商品の発送などに協力した場合、商標法違反の幇助犯が成立する可能性がある。
台湾の智慧財産及び商業法院は、CHANEL(シャネル)の商標権を侵害する商品を台湾の購入者へ発送していた被告について、商標法第97条後段に定める「インターネットを通じて商標権侵害品を販売する罪」の幇助犯に当たるとの判断を示した。
本稿では、智慧財産及び商業法院113年度刑智上易字第61号刑事判決をもとに、裁判所が被告の主観的認識をどのように判断したのかについて紹介する。
1. 事件の概要
被告の妹は中国大陸に居住しており、Facebookのファンページを利用して低価格の衣料品を販売していた。
被告は、妹から毎月5,000台湾ドルの報酬を受け取ることを条件として、自らが使用するFacebookファンページ、携帯電話番号および銀行口座を提供し、商品のライブ配信、顧客との連絡、代金の受領などに利用させていた。
また、妹が中国大陸から台湾へ送った商品を受け取り、その指示に従って台湾の購入者へコンビニ配送サービスを利用して発送していた。
一方、妹は、CHANELの登録商標であることを知りながら、商標権者の同意または許諾を得ることなく、インターネットを通じて当該商標を付した商品を販売していた。
その後、警察による捜査の結果、購入された商品および被告の自宅から押収された商品が、商標権者から許諾を受けて製造された商品ではないことが確認された。
第一審の台湾新北地方法院は、被告について商標法第97条後段違反の幇助犯に当たると判断した。被告はこれを不服として控訴した。
2. 本件の争点
本件の主な争点は、被告が商標権侵害品そのものを販売していたわけではなく、主として商品の受取りや発送を担当していた場合であっても、商標法第97条違反の「幇助犯」が成立するかという点である。
特に問題となったのは、被告が、発送していた商品が商標権侵害品である可能性を認識していたかどうかである。
被告は、妹から送られてくる商品は不透明なビニール袋で包装されており、一つ一つ開封して確認していなかったため、中身が商標権侵害品であることは知らなかったと主張した。
また、侵害品であることに気付いた場合には発送を拒否していたとも主張した。
3. 裁判所の判断
(1)被告は商品の性質を認識できる状況にあった
裁判所は、被告が長年にわたり衣料品販売業に従事しており、また、妹がFacebook上で販売していた商品が低価格帯の衣料品であることを明確に認識していた点を重視した。
さらに、被告と妹とのメッセージには、
「Diorの傘と一緒に発送して」
「小香の大きなクリップを一つ加えて一緒に発送して」
などの指示が含まれていた。
ここで使用された「Dior」や「小香」(中国語圏でCHANELを指す俗称)などは、世界的に著名なファッションブランドを意味するものであり、妹が通常販売していた低価格の商品とは明らかに性質が異なるものであった。
(2)侵害品である可能性を認識しながら発送を続けていた
裁判所は、上記のメッセージの前後関係を確認した結果、被告が、このような商品の発送を拒否する意思を妹に伝えた形跡はなく、その後も同様の発送指示を受け続けていたと指摘した。
このことから、被告は、自らが発送する商品が商標権侵害品であり、妹がその発送行為を利用してインターネット上で商標権侵害品を販売している可能性を認識していたと判断された。
それにもかかわらず発送を続けていたことから、仮に商品が商標権侵害品であったとしても、それを容認していたと認められ、少なくとも台湾刑法上の「不確定故意」、すなわち日本法上の「未必の故意」に相当する主観的認識があったと判断された。
(3)「中身を確認していなかった」との主張は認められず
被告は、商品が不透明な袋で包装されており、中身を確認していなかったため侵害品であるとは知らなかったと主張した。
しかし、押収された商品の経緯について、被告は、
消費者から返品された商品を開封したものである、
警察の捜索時に初めて開封された、
妹から開封するよう指示されて初めて侵害品であることに気付いた、
など、供述を変えていた。
裁判所は、これらの供述には大きな食い違いがあると指摘した。
また、実際のメッセージを確認しても、被告が侵害品の発送を拒否していたことを示すやり取りは認められなかったため、被告の主張を採用しなかった。
4. 判決の結論
智慧財産及び商業法院は、原判決の罪刑に関する部分を取り消した上で、被告について、商標法第97条後段に定める「インターネットを通じて商標権侵害品を販売する罪」の幇助犯が成立すると判断した。
被告には懲役2か月が言い渡され、罰金に換刑する場合は1日につき1,000台湾ドルとされた。また、犯罪によって得た5,000台湾ドルについても没収が命じられた。
5. 本判決から見る実務上のポイント
本判決では、実際に模倣品を仕入れたり、販売ページを運営したりしていない者であっても、商品の発送などを通じて販売行為に協力し、かつ、商標権侵害品である可能性を認識しながら協力を続けていた場合には、商標法違反の幇助犯となり得ることが示されている。
特に、「荷物の中身を直接確認していなかった」という事情のみで、当然に刑事責任を免れるわけではない。
当事者間のメッセージ、商品の価格帯や性質、業務経験、ブランド名に関する認識、発送を継続した経緯など、客観的な事情を総合的に考慮して、侵害品である可能性を認識していたかどうかが判断される。
ECサイトやSNSを利用した商品の販売では、販売者本人だけでなく、商品の受取り、代金回収、発送その他の販売プロセスに関与する者についても、取扱商品の適法性を確認することが重要である。
出典:台湾経済部智慧財産局(TIPO)
智慧財産及び商業法院113年度刑智上易字第61号刑事判決