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商品名や広告に他人の登録商標と同じ文字を使用していても、その使用が商品の特徴や効能を説明するものである場合、商標権の効力が及ばないことがある。台湾の智慧財産及び商業法院は、スキンケア商品の包装や販売ページに「賦活奇肌」という文字を使用していた被告について、商品の名称や効能を説明するための使用に当たると判断し、第一審の無罪判決を維持した。
本稿では、智慧財産及び商業法院113年度刑智上易字第63号刑事判決をもとに、「商標としての使用」と「商品を説明するための使用」の区別について紹介する。
1. 事件の概要
商標権者は、「賦活奇肌」の登録商標(登録番号第01802919号)を保有しており、化粧品、フェイスパック、スキンケア用品などの第3類の商品を指定していた。一方、被告が代表者を務める会社は、2022年12月以降、自社サイトやECサイトにおいて、「2.0激光賦活奇肌」「賦活奇肌魔法水」などの表現を商品の外箱や販売ページに使用し、スキンケア商品を販売していた。
商標権者は、これらの使用が自身の商標権を侵害すると主張した。また、商品の販売停止を求める弁護士名義の通知書を送付した後も、被告が当該文字の使用を続けていたとして、商標法第95条第1号違反に当たるとする自訴を提起した。自訴とは、被害者が検察官を介さず、直接裁判所に刑事訴追を求める台湾の手続である。
第一審の台湾高雄地方法院は、被告に無罪を言い渡した。商標権者はこれを不服として控訴した。
2. 本件の争点
本件の主な争点は、被告による「賦活奇肌」の使用が、商品の出所を示す「商標としての使用」に当たるのか、それとも商品の名称や効能を説明するための使用に当たるのかという点である。
台湾商標法第36条第1項第1号では、商取引の慣行に即した誠実な方法で、商品の名称、品質、性質、特徴、用途などを表示し、商標として使用していない場合、他人の商標権の効力は及ばないと定められている。このような使用は、台湾では「描述性合理使用」と呼ばれ、日本の「記述的フェアユース」に相当する。
商標権者は、被告が「賦活奇肌」を目立つ形で使用しており、消費者に商品の出所を示す機能を果たしていると主張した。これに対し、被告は、当該文字を商品名や効能の説明として使用しているにすぎず、ブランドを識別するために強調していないと反論した。
3. 裁判所の判断
(1)包装全体から見て、当該文字は強調されていなかった
裁判所は、商品の外箱における文字の配置、大きさ、書体、色彩などを確認した。
外箱の側面には「2.0激光賦活奇肌」と表示されていたものの、その文字の大きさ、書体および色は、下方に記載された商品説明、成分、使用方法などと同じであり、「賦活奇肌」だけを目立たせる構成にはなっていなかった。一方、外箱の正面には、被告側のブランドである「CREND」のロゴが大きく、目立つ位置に表示されていた。裁判所は、このロゴの方が消費者の注意を引き、商品の出所を識別させるものと判断した。
(2)販売ページでも、商品説明の一部として使用されていた
販売ページにおいても、「賦活奇肌」は単独で使用されていたのではなく、「2.0激光賦活奇肌」「賦活奇肌魔法水」といった表現の中で使用されていた。また、文字の大きさや書体によって「賦活奇肌」を特に強調しておらず、掲載された商品画像には「CREND」のロゴが表示されていた。
一部の広告画像や動画のスクリーンショットには同ロゴがなかったものの、それらは「crend醫美級專業保養品」というFacebookページに掲載されていた。裁判所は、掲載元を含む表示状況から、閲覧者は商品の出所を把握できると判断した。
(3)スキンケア商品の特徴や効能を説明する表現と認められた
裁判所は、「賦活」「奇肌」「賦活奇肌」などの表現が、ほかのスキンケア商品の名称にも使用されている点を考慮した。これらは、肌への働きや効果を表現する際に用いられる語句であり、本件でも商品の名称や効能を説明するために使用されていると認められた。
この判断に当たっては、文字の意味だけでなく、包装や販売ページの全体構成、独自ブランドの表示、各表示が消費者に与える印象が総合的に検討された。
(4)商標権者の反論は採用されなかった
商標権者は、商品の成分や効能の説明に、「肌に活力を与え、奇跡のような肌を生み出す」といった内容が記載されていないことから、被告の説明には根拠がないと主張した。しかし、裁判所は、提出された画像が主要成分それぞれの効能を説明するものであり、商品全体の効能とは区別すべきであると指摘した。また、商品名の付け方がほかの商品と異なるという事情だけでは、他人の商標の信用に便乗する意図があったとは認められないとした。
4. 判決の結論
智慧財産及び商業法院は、被告による「賦活奇肌」の使用について、商品の品質、性質、特徴などを説明するものであり、商品の出所を示す商標としての使用には当たらないと判断した。さらに、その使用態様は通常の商業上の表示慣行に沿った、善意かつ合理的な使用であり、商標法第36条第1項第1号に基づき、当該登録商標の効力は及ばないとした。このため、商標権者の控訴を棄却し、第一審の無罪判決を維持した。
5. 本判決から見る実務上のポイント
本判決では、他人の登録商標と同じ文字が商品名や広告に含まれている場合に、その文字が商品の出所を示すものとして使用されているか、それとも商品の名称や効能を説明するものとして使用されているかが検討された。
裁判所は、文字の大きさや配置、書体、色彩、自社ブランドの表示、掲載ページの内容などを総合的に考慮し、本件の「賦活奇肌」の使用は、商品の名称や効能を説明する記述的な使用に当たると判断した。
ただし、本判決は、本件の具体的な使用態様に基づく判断である。使用する側としても、自社ブランドを併記していることだけで問題がないと判断せず、当該表現が商品の出所を示す表示となっていないか、包装や広告全体の構成に注意する必要がある。