故意の反復的権利侵害に厳罰下る
 

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故意の反復的権利侵害に厳罰下る

故意の反復的権利侵害に厳罰下る

【判例紹介CN01】上海知識産権法院(2017)滬73民終85号民事判決

【事件概要】

2003年9月、日本の株式会社カナツー(以下「カナツー社」という)は、中国において「静音」商標を登録した。現在権利存続中の当該商標について、2009年から2013年の間、商標専用権を侵害し不正競争行為を行ったとして、上海連和工業車輌設備有限公司(以下「連和工業公司」という)と上海連和五金機械有限公司(以下「連和五金公司」という)に対し商標権侵害行為の停止と損害賠償を命じる判決が下された。

 

さらに2015年11月、連和工業公司がカナツー社の「静音」商標を無断で使用した台車製品を紹介し、「上海連和工業車輌設備有限公司は中日合資企業であり、……“静音”は既に商標登録され……」と標榜していた。カナツー社は、これらの行為が商標専用権を侵害し不正競争を構成するとして、再び連和工業公司を提訴した。

 

【判決の要旨】

第一審法院は、連和工業公司がカナツー社の商標専用権を侵害しており、かつ連和工業公司のホームページ上の関連記載が消費者の誤認を招く不実の宣伝であると判断し、連和工業公司はカナツー社に対する商標権侵害および不正競争行為を即刻停止し、経済損失および合理的な諸費用として3万人民元の賠償金を支払うよう命じた。

 

カナツー社は第一審判決の賠償金額を不服として上訴し、第二審法院は、連和工業公司がホームページ上でカナツー社の「静音」商標を使用した台車商品を宣伝・紹介しており、その行為が商標法に規定する商標の使用に該当すると認めた。連和工業公司は、「静音」は台車の性能に関する説明であると主張したが、同社は同じ理由で「静音」商標についての商標争議を申し立てており、2012年に商標評審委員会(商標審判部)により当該商標権を維持する審決が既に下されている。連和工業公司は、この審決結果を把握しておきながら、依然としてホームページ上でカナツー社の「静音」商標を使用しており、その主観的故意・過失は明らかである。

 

また、2009年、連和五金公司は、本件と全く同じ権利侵害行為を行ったとして、権利侵害行為の停止および損害賠償を命じられた。一方、連和工業公司は、その関連会社である連和五金公司の権利侵害行為や関連判決結果を把握していたにもかかわらず、依然としてカナツー社に対し反復的な権利侵害を構成する行為を行っており、その主観的故意・過失が明らかであるとして、連和工業公司が支払うべき損害賠償額は、12万人民元となった。

 

【分析】

本件二審の争点:

一、連和工業公司の行為は反復的な権利侵害に当たるか。

二、一審で示された損害賠償額は妥当か。

 

一について

連和工業公司のホームページには連和工業公司の経営情報が明示されているので、反対の証拠がなければ、ホームページにおける商標権侵害の情報が連和工業公司により公表されたものであることを証明でき、連和工業公司の行為は商標権侵害および不正競争を構成することになる。第一審では連和工業公司の行為が反復的な商標権侵害に該当すると認められなかったが、関連の権利侵害行為を認める先の判決が既に存在することから、侵害行為者が類似行為により先行事件と同じ権利を再び侵害した場合、反復的な権利侵害を構成すると認定されるべきである。

 

二について

連和工業公司の行為が反復的な商標権侵害を構成すると認められた場合、侵害行為者により重い賠償責任を課し、権利者の合法的権益の実現を適切に保障するべきである。賠償金額が低過ぎると、侵害者の侵害行為にかかるコストが低過ぎるため、反復的な権利侵害の再発を招く恐れがある。

 

出所:人民法院報