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【判例紹介CN02】中国北京高級人民法院(2017)京行終2156号行政判決
【事件の概要】
イタリアのアイマック社は、中国で登録された第4862095号「IMAC」商標がアイマック社の美術作品《IMAC》の先行著作権を侵害したとして、中国商標局に異議を申し立た。8年に及ぶ訴訟の末、北京市高級人民法院(高等裁判所)は、第4862095号「IMAC」商標がアイマック社の先行著作権を侵害してはいないという判決を下した。これにより、中国国家工商行政管理総局商標評審委員会(商標審判部)による係争商標の不登録という不服審判の裁定(審決)は取り消され、新たな裁定を下すよう命じられた。
【判決の要旨】
北京市高級人民法院によると、アイマック社が提出した作品著作権登記証書は著作権享有を証明する初歩的証拠であり、その登記日は係争商標の登録日より遅く、同登記証書に記載された1980年5月6日はアイマック社が創作を完成したとする日付であるが、当該作品の発表日ではなく、同社が提出した作品著作権登記申請書にはその発表状態が「未発表」となっていた。アイマック社は、1998年1月4日付で中国商標局に「IMAC」商標の出願を行ったが、その後拒絶理由通知を受けたので、この出願日をもって中国内で既に公開されたことを証明することはできないと主張した。北京市高級人民法院は、提出された証拠は係争商標の出願登録がアイマック社の先行著作権を侵害していることを証明するには不十分だと認め、商標評審委員会とアイマック社の上訴を退けた。
【分析】
まず、著作権を主張する作品の図案が著作権法で定義される作品を構成していることが先行著作権成立の基本的前提となる。次に、当該作品が著作権を享有するか否かと、商標権者が当該作品に関わった可能性があるか否かは、係争商標が他人の著作権を侵害しているか否かを判断する際の重要な適用要件である。
当事者が提供するロゴのデザイン草案、原案、権利取得の合同、係争商標出願日前の著作権登記証書、商標公告、商標登録証等は著作権享有の初歩的証拠であり、当該作品著作権の享有を証明するのに十分な証拠を提供することは極めて重要である。
また、商標権者が、他人が著作権を享有する作品に接触したことがあるまたは接触した可能性があることを証明する必要もある。本件では、アイマック者が提供した著作権登記書に記載された発表状態が「未発表」であり、かつ当該作品がすでに中国で発表されたり使用されたりしていたことを証明するその他の証拠が提出されなかったために、商標権者が当該作品に接触した可能性はないと判断され、係争商標がアイマック社の著作権を侵害していることは証明されなかった。