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中国・台湾における実用新案制度の比較
要件/国 |
中国 |
台湾 |
権利存続期間 |
出願日から10年 |
出願日から10年 |
形式審査 |
あり |
あり |
二重出願に関する願書の記載 |
出願時に明記が必要 |
出願時に明記が必要 |
二重出願における権利の接続 |
あり(実用新案権は特許の授権公告日に消滅) |
あり(出願人が特許を選択した場合、実用新案権は特許の公告日に消滅) |
産業上利用可能性要件 |
判断の必要あり |
判断の必要なし |
新規性要件 |
判断の必要あり |
判断の必要なし |
先行技術調査 |
出願状況による |
調査の必要なし |
出願の種類変更 |
なし |
特許/意匠→実用新案 実用新案→特許 |
国内優先権主張における先願のみなし取下げの猶予期間 |
なし(先願は、後願の出願日より取り下げたものとみなされる) |
あり(先願は、その出願日から15ヶ月満了すると取り下げたものとみなされる) |
請求項における保護対象 |
製品の製造方法、処理方法、使用方法等の特徴は記載不可 |
構造的特徴が一項含まれれば、物品の製造方法、処理方法、使用方法等の特徴を組み合わせることは可能 |
技術評価書の請求者 |
権利者または利害関係者のみ |
誰でも請求可 |
国際出願から国内出願への移行ルート |
PCTルートあり パリルートあり |
PCTルートなし パリルートあり |
中国と台湾の特許業界従事者がすぐにわかるのは、どちらも実用新案制度を有することである。一般的に実用新案のメリットは、発明特許と比べて審査期間が短く、登録までの手続きが迅速で、しかも実体審査は行われない点にある。実用新案の考案は特許と比較して発明性が低いため、“小特許(petty patentsまたはminor patents)”と称されることもある。実用新案制度を有する国々の大半では考案が新規性を備えることを必須とするが、多くの特許主務官庁は実用新案の実体審査を行わず、出願書類が形式的要件を満たしていれば登録査定を受けることができる。
ここでは、中国や台湾における権利取得のための参考資料として、上記の表を用いて中台間の実用新案出願・審査の相違点を紹介する。
台湾と中国の実用新案制度の概要は大体似ているが、細かい部分が異なるので注意が必要である。たとえば、台湾では実用新案出願に対して先行技術調査を行わず、単一性の有無は判断するが、新規性の有無は判断しない。一方、中国の審査官は状況に応じて先行技術調査を行ったり新規性の有無を判断したりする。また、請求項における保護対象は最も重要な相違点である。中国では製品の製造方法、処理方法、使用方法等の特徴を含む請求項は、いかなる場合も保護の対象にならない。台湾では構造的特徴を含む請求項が一項でもあれば、物品の製造方法、使用方法、処理方法等の特徴と組み合わせることは可能である。出願者は台湾および中国において実用新案登録出願を行う際、これらの相違点に留意しなければいけない。