台湾発の人気手作りドリンクチェーン「COMEBUY」は、約20年間販売してきた看板商品「海神(ハイシェン)」の名称を「嗨神(ハイシェン)」へ変更したことを発表した。変更の背景には、第三者による「海神」商標の先行登録があることが明らかとなった。
台湾知的財産局(TIPO)の公開情報によれば、COMEBUYを運営する長沂國際實業股份有限公司は、「海神」商標(登録番号第01830579号)に対して商標評定請求(無効審判に相当)および商標廃止請求(不使用取消に相当)を申し立てたものの、いずれも認められなかった。
TIPOは、COMEBUYが「海神」を自社の代表的商品名称として使用してきたと主張している点について、提出された証拠が周知・著名性(著名商標)の立証には不十分であると判断した。具体的には、SNSでの話題性、売上順位や市場占有率に関する具体的なデータが欠如しており、「海神」が一般需要者に広く認識されているとは認められないとされた。
さらに、商標登録人の住所が台中市であるのに対し、COMEBUYは当時その地域に店舗を有しておらず、両者に地理的・取引上の接点がなかったことも、模倣の意図を裏付ける根拠にはならないと判断された。
一方、商標権者側は、「海神」は任意的用語であり、COMEBUY側はこれを商品名として使用しているのみで、商標的使用とは認められないと主張した。
このような経緯を受け、COMEBUYは早くも2024年2月に新名称「嗨神」の商標出願を行い、同年4月に正式に登録を取得している。同社のマーケティング責任者によれば、「嗨神」は音韻が旧名称と近く、味も20年来のレシピを踏襲しており、若年層にも親しみやすい名称として今後も展開していく方針であるという。
本件に関し、台湾の弁護士は「商標が第三者に先に登録されてしまった場合、たとえ自社が先に使用していたとしても、その主張が必ずしも認められるとは限らない。商品開発段階から商標ポートフォリオの構築を意識すべきである」と注意を呼びかけている。
出典:FTNN新聞網 https://www.ftnn.com.tw/news/435016