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「ザ・リラクス(THE RERACS)」を手掛けるザ・リラクスがザラ・ジャパンを相手取り、「ザラ(ZARA)」が「ザ・リラクス」のコートの形態を模倣し販売したことが不正競争防止法上の不正競争行為に当たるとして、約7000万円の損害賠償請求を申し立てていた件について、東京地方裁判所がザラ・ジャパンに1041万7282円の支払いを命じていたことがわかった。両社ともに控訴せず、判決は確定している。
今回の件を受け、ザ・リラクスの倉橋直行・社長と倉橋直美デザイナーは「今回の判決によって、アパレル業界全体の知的財産に対する知識と不正競争防止法の存在する意味や今後の法律の進化を含めて、『ZARA』はもちろんであるが、弊社およびアパレル業界全体および生産背景が、継続可能ないい会社およびブランド作りを心掛けないければいけない時代であると強く感じている」と話す。
判決に対してザラ・ジャパンは「2016年に『ザ・リラクス』側の弁護士団から通知を受けたのち、直ちに商品の販売を停止した。今回の非意図的かつ特殊な事例から責任をもって謙虚に学ぶべく、調査を開始した」とコメントした。
今回の事案について裁判所は、両社のコートにはいくつかの相違点があることは認めつつも、「基本的な形態から細部の形態に至るまで多数の共通点が認められ、その形状はほぼ同一であるといえる」と判断。また、争点になっているコートが一般的にミリタリーパーカと呼ばれるファッションアイテムでありふれた商品に該当することは認めたが、「ザラ」が販売した“「ザ・リラクス」のコートの特徴を有するミリタリーパーカ”は、「偶然に一致することは考えがたい」とし、両社のアイテムの販売時期からザラ・ジャパンが「ザ・リラクス」の当該商品の「形態を把握することは十分に可能であった」と判断した。
ザ・リラクスは、米軍のユニホームM-65由来のいわゆるモッズコートをベースとしたAラインのショート丈のコート(5万4000円)を16年以前から販売していた。「ザラ」が16年春夏シーズンに販売したコート(7398円)が「ザ・リラクス」のコートの「基本的形態のみならず、具体的形態にわたり」同一であると主張。また著名な雑誌への掲載や各国の有力百貨店で展開した実績もあることから、ザラ・ジャパンが「ザ・リラクス」のコートを認識していたと主張した。
一方でザラ・ジャパンは、「一般的なミリタリーパーカと呼ばれるパーカとしては極めてありふれたものにすぎない」として、不正競争行為に当たらないと反論。「ザ・リラクス」はフード部分にワイヤーを使用しているのに対して「ザラ」の商品は使用していないことや素材が異なることから、同一ではないと主張した。また、「ザ・リラクス」の知名度は高いとは言えず、同ブランドの「商品の存在を知らなかった」と主張した。
ザ・リラクスは16年春、SNSで「『ザ・リラクス』の完コピ品が廉価で手に入る」といった投稿が広がっていたことをきっかけに「ザラ」の商品を知ったという。直後に行った展示会で、取引先バイヤーが「『ザラ』が出している類似品を最近よく見かける」と話しているのを聞き、実際に「ザラ」の商品を買い求め、ザラ・ジャパンに連絡を取り、今回の訴訟に発展したという。