よくある質問

　「著作物」とは文学、科学、芸術またはその他学術の範囲に属する創作を指します。著作物は、言語の著作物（詩歌、随筆、小説、脚本、学術論文、講演原稿を含む）、音楽の著作物（楽譜、歌詞を含む）、演劇および舞踊の著作物（舞踏、黙劇、歌劇、話劇を含む）、美術の著作物（絵画、版画、漫画、コミックス（アニメーション）、動画、素描、書法、字形絵画、彫刻、美術工芸品を含む）、写真の著作物（写真、スライド写真（投影フィルム）を含む）、図形の著作物（地図、図表、科学技術や工学設計図を含む）、視聴覚著作物（映画、録画、ディスクビデオ、コンピューター・ディスプレイに表示される映像およびその他機器や設備によって表現される系列映像であれば、音声の付随如何を問わず、あらゆる媒体物に付することのできる著作を含む）、録音の著作物（あらゆる機器や設備によって表現される系列音声で、それがあらゆる媒体に付することができる著作物を含む）、建築の著作物（建築設計図、建築模型、建築物を含む）、コンピュータプログラムの著作物（直接または間接的にコンピューターに一定の結果を発生させることを目的として組み込まれる指令の組み合わせからなる著作物を含む）、に分類されます。台湾著作権法（以下、「著作権法」）による保護は当該著作物の表現にとどまり、思想、手順、製作過程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及びません。

　著作権法第10条では、「著作者は、著作物を完成したときからその著作権を享有する。ただし、本法に別の規定がある場合は、その規定に従う」と規定されています。つまり、原則上は著作者が著作物を完成させた時点から著作権が保護されることになり、登録制ではないので、登録手続きは特に必要ありません。

　台湾は2002年1月1日WTO（世界貿易機関）に加盟し、台湾著作権法による保護対象はWTOの全加盟国の国民の著作物に及ぶことになりました。WTO非加盟国については、その国と台湾の間に著作権保護の相互承認や協定があるか否かによります。

　著作者が著作権法に基づき享有する著作権は、著作人格権と著作財産権に分けられます。著作人格権の存続期間に制限はありません。著作財産権の存続期間は、著作者の生存期間および著作者の死後50年間となります。ただし、別名または無記名の著作物の著作財産権、法人が著作者である著作物の著作財産権、写真、視聴覚、録音および実演の著作財産権の存続期間は著作物の公表後50年間となります。

　著作権法における「複製」とは、著作物を再製して著作内容を再現することであり、恒常的な再製も一時的な再製も複製になります。

　コンピューターの電源が入っている時にRAM（ランダム・アクセス・メモリー）に蓄積されたデータはコンピューターの電源が切れることにより消失します。これは一時的な再製であり、一時的な再製は複製の範囲に属するため、著作権法により保護されます。この点（電子データ上の複製も複製の形式に含まれること）については、2003年7月9日の著作権法改正時に明文化されました。

　一時的な再製が著作権法により保護されるのであれば、日常生活で広く行われているパソコンやビデオ・ディスク・プレーヤーを使用して動画を見る、音楽を聴く、コンテンツを伝送する、といった行為は他人の著作権を侵害することにはならないのでしょうか？このような疑問に対応するため著作権法には、インターネットでの合法的中継的転送または著作物の合法的使用で、技術操作の過程に必要な暫定的、付属的である複製物は複製権の範囲に属さないと明記されています。つまり、このような状況から生じた一時的な複製は、著作権法に反して複製権を侵害することにはなりません。したがって、一般的なパソコンやデジタル・ディスク・プレーヤー等の機器を使用する行為は一時的な複製を伴いますが、違法にはなりません（著作権法第3条第5項、第22条）。

　日常生活における次のような「一時的複製」行為は違法にも権利侵害にもなりません。

（1）購入した光ディスクをパソコンやビデオ・ディスク・プレーヤーで再生して映像、画像、文章、音楽を鑑賞する。

（2）インターネット上で映像、画像、文章、音楽を閲覧する。

（3）ワードやエクセルのようなパソコン購入時に既に搭載されていたコンピュータープログラムを使用する。

（4）インターネット・サービス・プロバイダーを通じてインターネット上でコンテンツを伝送する。

（5）学校や企業がプロキシサーバーを使用してインターインターネット利用者が閲覧できるようにコンテンツをプロキシサーバーに保存する。

（6）コンピュータープログラムを修正する。

　科学技術保護措置とは、著作財産権者が著作物に対する他人による無断侵入または無断利用を防止するために採用する防護措置であり、設備、機材、機器上の部品、ロック技術、シリアルナンバーまたはパスワード等の科学技術的方法を指します。他人が著作物に侵入して接触したり著作物を利用したりすることを禁止、制限できる方法はすべて科学技術保護措置に含まれます。

　台湾デジタル産業における著作財産権保護にニーズに応じ、インターネットの活用、デジタル産業の発展、各種業務の電子化を達成するため、著作権法では「無断複製防止措置」に関する規定が特別に設けられています。

　「無断複製防止措置」とは主に、著作権者が講じる無断複製防止のための技術的保護手段であり、合法的な許諾を得ずにこの保護手段を解除、破壊または回避することはできません。また、無断複製防止のための保護手段を解除、破壊または回避するための技術、設備またはサービスを提供することもできません。ただし、例外が設けられており、国家安全を確保するための場合や個人情報保護のための場合等にはこの規定は適用されません。

　また、一般の消費者が無断複製防止措置（アクセスコントロール）を解除して著作物にアクセスしても、刑事責任は問われませんが、権利所有者が損害を受けた場合は、その損害に対する賠償責任を負わなければなりません。つまり、デコーダーを購入してデジタル放送番組を視聴したり、他人が提供する登録番号を使用してオンラインで音楽や映画を鑑賞したりオンラインゲームを利用する等の行為は刑事的処罰の対象にはなりません。

　転載とは、他人が既に公開発表した著作物を他の刊行物、新聞、雑誌等に載せる行為を指します。新聞、雑誌またはウェブサイトに掲載された政治上、経済上または社会上の時事問題に関する論説は、他の新聞、雑誌またはウェブサイトに転載することができます。ただし、転載を禁止する旨の表示がある場合は転載できません。また、転載の際は著作物の出所を明示する必要があります（著作権法第61条、第64条）。

　また、著作権法第9条に定められているとおり、通用の数表・図表自体は著作権の保護対象にはなりませんが、著作権の目標となる図表は著作権の保護対象になります。著作権の保護を受けられる図表が前述の第61条の転載可能な著作内容の一部である場合、転載可能となります。これに該当しない場合は、「報道、評論、教育、研究またはその他の正当な目的のために必要がある場合には合理的な範囲内において、既に公表された著作物を引用できる」といったその他合理的使用を認める条文に該当する図表は使用可能になります。このような合理的使用の条文に該等しない図表使用の場合、著作財産権者または使用許諾を受けた者の同意を得る必要があります（著作権法第9条）。

　権利侵害に対しては次のような救済があります。

（1）著作権者はその権利を侵害する者に対し、その侵害の排除を請求できる。また侵害するおそれがある場合には、その防止を請求できる。

（2）著作者人格権を侵害する者は、損害賠償の責任を負わなければならない。この場合、財産上の損害でなくても、被害者は相当の金額の賠償を請求できる。

（3）侵害行為により作成されたものまたは主に侵害に用いられたものについて、廃棄またはその他必要な措置を請求できる。

　著作者は著作権法に別段の定めがある場合を除き、その著作物を複製する権利を専有しているので、合理的な使用の状況に該当しない場合は、他人の著作物を複製する際に著作財産権者の同意または使用許諾が必要となります。したがって、消費者が海賊版ディスク内のコンピュータープログラムのような著作物をコンピューターのハードディスクにインストールして使用することは、合理的使用の状況に該当する場合は著作権侵害にあたりませんが、該当しない場合は複製権の侵害となり、複製の方法により他人の著作財産権を侵害することになります。

　たとえば、消費者が不注意で海賊版のコンピュータープログラムを購入し、個人または家庭用のパソコンにインストールした場合は合理的使用が成立する余地があり、著作権侵害の問題は生じません。しかし、会社のパソコンにインストールして業務に使用した場合は、著作財産権侵害の問題が生じ、民事責任を負うことになります。インストールして使用する状況が、著作権法の複製権侵害または海賊版コンピュータープログラムの営利的使用の状況に該当する場合、刑事責任を追求されます。消費者が購入したコンピューターに既に海賊版のコンピュータープログラムがインストールされており、それを知らずに使用した場合は、一時的複製の状況が発生するだけなので、合理的使用に該当し、合法的行為とみなされ、著作権の侵害にはあたりません。

　音楽のMP3ファイルを交換するプラットフォームを使用することは、著作者の「複製権」および「公開伝送権」に係わり、インターネット上で他人の著作物を利用することは、合理的使用の規定に該当しない限り、著作財産権者の同意または使用許諾を先に得る必要があり、同意も使用許諾もない場合は著作権侵害の問題が発生します。したがって、MP3ファイル交換サイトの運営者は、自分またはそのサイトを利用して音楽ファイルを交換する者が著作財産権者の使用許諾を得ていないことを明らかに知った上で、そのサイトを提供して利用者が自身で他人の楽曲をアップロードまたはダウンロードできるようにし、音楽著作物の複製、公開伝送および著作物の録音行為に係わった場合、海賊版音楽ファイルの交換に係わった者は、状況に応じて複製権または公開伝送権の侵害による民事・刑事責任をそれぞれ追求されます。

　自分や家族が聞くためだけにMP3ファイル交換サイトが提供する楽曲をダウンロードすること、またはコピーすることも複製行為に係わりますが、少量のダウンロードで当該音楽製品の市場における売上に悪影響を及ぼすほどでない場合は、合理的使用行為とみなされ、著作財産権の侵害にはあたりません。ただし、合理的使用の範囲を超えた場合は、複製権の侵害にあたります。MP3ファイル交換サイトで楽曲をダウンロードし、公共の場で再生してその場にいる人々に聞かせることは、複製および公開演出の行為に係わり、歌詞や楽曲の著作財産権者の使用許諾または同意を事前に得ていない場合は、著作権侵害行為になります。

　一、「インターネット・サービス･プロバイダーの民事免責事由」の対象はインターネット・サービス･プロバイダーであり、著作権法第3条第1項第19号に基づき、以下のようなサービス提供者が対象となります。

（一）接続サービス・プロバイダー：その管理または運営するシステムまたはネットワークを通じて、有線または無線により情報の送信、転送、受信を行いまたは前述の過程において仲介および一時的記録を行うサービスを提供する者（例：中華電信Hinet、So-net 、Seednet）。

（二）キャッシングサービス・プロバイダー：利用者の要求に応じて情報を伝送した後、その管理または運営するシステムもしくはネットワークを通じて、当該情報の仲介および過度的な保存を行い、当該情報の伝送を要求した利用者がその後、当該情報への高速アクセスができるようにするサービスを提供する者（例：中華電信Hinet、So-net 、Seednet）。

（三）情報保存サービス・プロバイダー：その管理または運営するシステムもしくはネットワークを通じて、利用者の要求に応じ情報保存サービスを提供する者（例：ブログ、インターネットオークション等のサービスを提供するYahoo奇摩、PC Home、露天拍賣等）。

（四）検索サービス・プロバイダー：ユーザーにネットワーク情報のインデックス、レファレンスまたはリンクに関する検索またはリンクのサービスを提供する者（例：Google、百度等の検索エンジン）。

　二、インターネットの国際性と共通性を考慮し、上述の免責事由の適用対象範囲およびその分類は、各国の関連規定を参考にした規範が設けられ、世界各国で統一されています。

　一、インターネット利用者が著作財産権者の同意を得ず、ネット上に他人の著作物をアップロードもしくは転載する、海賊版を販売する、または端末間通信を行うP2Pソフトを用いて無断で他人の動画、音楽、文章を違法伝送する等は、他人の著作財産権を侵害する行為であり、著作権者は当該利用者に対し提訴する以外にも、インターネット･サービス･プロバイダー（以下、「プロバイダー」）に通知する、プロバイダーに著作権を侵害する当該コンテンツの削除を求めるという選択肢もあります。著作権法第90条の4第1項第2号によれば、インターネット利用者に権利侵害の事実が3回あった場合、プロバイダーは当該利用者に対する全部または一部のサービスを終了することができるので、法に抵触しないためにも、インターネット上で他人の著作物を使用する際は合法性に注意する必要があります。

　二、インターネット利用者が不注意でインターネット上での侵害行為に係わってしまうことケースは多数あります。そのため、インターネット上の著作権侵害行為について、ノーティス・アンド・テイクダウン（通知・削除）という手続きがあり、著作権者からの著作権侵害通知を受けたプロバイダーは、コンテンツをアップロードした利用者にそのような通知があったことを連絡し、当該利用者からの異議がなければ当該コンテンツを削除します。この手続きを行ったプロバイダーは賠償責任を免責され、また、これにより当該利用者に自身がネット上に流通させたコンテンツに権利侵害の疑いがないか改めて注意を促し、権利侵害行為はすぐに阻止され、同行為のさらなる広がりも回避されるので、不要な法的訴追も免れます（著作権者は必ずしもインターネット利用者の不法行為を追及するとは限りません）。つまり、この制度には司法資源の有効活用という意義があるのです。

　三、当該利用者が自身の行為は権利侵害にならないと考える場合、プロバイダーに「回復通知」を行って削除されたコンテンツの回復を求めると同時に、当該利用者が著作権者の不実の通知によって損害を被った場合は、著作権法第90条の11の規定により、不実の通知を行った者に対して損害賠償を請求でき、これにより権利所有者による通知の濫発を抑止し、インターネット利用者自身の正当な権益を守ることができます。

　四、インターネット利用者の個人情報･プライバシーの保護という観点から、プロバイダーが著作権者の通知により権利侵害の疑いがあるコンテンツを削除した後に当該利用者がプロバイダーに「回復通知」行った場合のみ、著作権者は当該利用者の個人情報を入手して当該利用者が権利侵害したか否かを確認し、訴訟手続き準備を進めることができます。当該利用者が「回復通知」を行わなかった場合は、その個人情報が著作権者に提供されることはありません。

　五、本制度実施の実情は、最初に著作権者がプロバイダーに「通知」を行いプロバイダーが権利侵害の疑いがあるコンテンツを削除した時点で権利侵害が阻止されるケースが多く、通知を受けたインターネット利用者が権利侵害はないと主張して「回復通知」を行うケースは少数です。つまり、上述の四の説明のような限られた状況においてのみ、インターネット利用者の個人情報が著作権者に提供されるので、本制度においてはインターネット利用者のプライバシー保護について十分に考慮されていると言えます。